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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
ゾンビ編

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ゾンビ初心者うさみ 11

 礼拝堂上空二十メートルほど。

 うさみはアップルを伴って立っていた。

 地上では礼拝堂を取り囲むゾンビおしくらまんじゅうが、そしてさらに外側には十分な距離を取って一緒に逃げてきた皆さんがゆるりと包囲していた。

 万が一ゾンビが逃げたら倒してね。念のためにできるだけ怪我しないように気を付けて、と伝えてある。無茶を言うなと返されたが。

 でもエルフの弓使いがいるから普通のゾンビなら近づかれる前に対応できるだろう。


 ゾンビたちはうさみに気づいた様子はなく、礼拝堂にこだわっているらしい。

 それほどゾンビの気を引く何かがあるのか、それとも認識能力が低く最初の標的にこだわっているのかもしれない。かもしれないだから調べてみたい気もするが、これだけ数が多い中でやることでもない。



「ゼロでいくよ。さん、にー」

「いち、ゼロ」

「転ぶ魔法」



 うさみのカウントダウンをアップルが引き継ぎ、うさみはアップルの足場を解除。今回はちゃんとゼロで。

 そして、ゾンビの周囲に円を描いた。これも一種の結界であり、この円を超える瞬間転んでしまう。二本足ならほぼ確実で、四本脚で気を付けてまたぐとちょっと効果が薄いだろうか。

 転倒させる魔法は比較的簡単で種類も多く、かつそれなりの効果が見込め、特に逃げる時には便利なのでうさみも覚えていた。これを結界の魔法と組み合わせることでゾンビが散るのを抑止したわけである。


 転倒にしろ、物質媒体を使わない結界魔法にしろ、長時間の足止めにはならないが、今回は十分だ。



 どっかん。



 密集している真ん中に落ちたアップルが、赤い嵐となった。


 初撃の爆発で空間を作ると、あとは当たるを幸いに薙ぎ払う、いや薙ぎ潰す。

 ゾンビたちは吹き飛びはしない。

 当たったその場で粉砕され、元の形を失っていく。


 人類上位の戦闘能力の持ち主は、常識はずれの力なり、技術なりを持っている。

 橙の森で追尾する矢を撃ってきたエルフ然り、狭義の魔法を使わず魔法と同等かそれ以上のことができるようになるのだ。

 それが身体能力にまわれば、兵士からゾンビになって耐久力が上がった肉体を、容易に木っ端微塵にする程度はたやすいのである。


 地球時代で考えれば、人間が起こしていることとは思えない光景。

 はっきり怖い。当たったらうさみだって同じ結果になるだろう。たぶん。

 だからうさみは強い人にあまり近寄りたくないくらいだ。


 ともあれ、どっかんも最初の一撃だけで、アップルのパワーによってゾンビたちは処理された。

 ゾンビは恐慌を起こすこともないし命令でもなければ逃げだすようなこともない。場合によってはそれは恐るべき特徴であるが、今回に限ってはこちらの都合よく働いた。

 アップルに寄ってきたのでなんというか入れ食い状態。上から見ていると、アイスにあったかいスプーンを当てでもしたように消えていった。


 そして後には血と肉のにおいだけが残ったので、うさみは地面を操作する魔法で地中深くに埋めた。

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