表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
298/494

戦争初心者うさみ 86

 なんで戦争なんかに参加しているのかと問われれば。


「義理と人情と流れと勢いかな」


 状況のせいである。

 関わってしまった小さな子(エルプリ)を見捨てられなかったところから始まったが、そこから先は流されてきた。


 人質にしてもエルプリだけならどうにでもなった。無理すれば他のエルフもどうにかできただろう。

 やらなかったのは別の理由もあるが、基本的にはエルプリの意思を尊重したためだ、というとエルプリのせいにしているようで聞こえが悪いが。

 しかし、そんな理由でうさみが戦争に参加してもよかったのだろうか。


 そんなことに思いをはせていると。

 赤い女戦士が尋ねてくる。



「義理と人情じゃあ、引き抜けそうにないかしらね? おカネとか名誉なら用意できるのだけど」

「あー、残念ながら?」


 引き抜き。

 戦場で直接まみえてからする話ではないと思うけれども。

 それにしても評価されてる、のかな?

 現在進行形で邪魔しているのだから相応かもしれない。

 金で即解決するならダメもとで言うくらいするだろう。なぜか会話する雰囲気になったし。不思議なことに。



「そういうそっちはなんで戦争してるの?」

「あ、聞いてくれる?」



 せっかくなのでうさみが尋ね返すと赤い女戦士はうれしさを隠さずに応えた。


 要約すると。


 魔物戦線の最前線で戦っていたところ、大攻勢が発生、これを食い止める戦いで彼女が所属するチームが活躍したのだそうだ。

 まさに勝敗を分けた、後背が蹂躙されることを止めた決定的な活躍だったらしい。

 この辺話がちょっと長引いたので割愛するが、この上ないドヤ顔で話してくれた。


 そしてその結果、褒賞として領地をもらえることになったのである。

 正確にはその権利と支援。

 他国を攻めて得た領土の一部をもらえることになっているのだと。


 以前に聞いた帝国の都合の話と一致する話である。


「迷惑だなあ」


 正直な心境を吐露すると、赤い女戦士は渋い顔をした。


「侵攻されずに帝国の一員になる道もあるのにずっとはねのけてるからよ」

「そりゃまあ嫌でしょ」

「帝国は魔物との闘いを支えている国の集合なのよ。これに協力しないってのは魔物との闘いを邪魔しているということだわ」


 なるほど。

 帝国はそういう立場なのか。

 うさみは内心で頷いた。


 生存戦争に協力せず何なら足を引っ張ってくる相手と。

 言いがかりをつけて侵略してくる相手。


 お互いの認識がそうなら容易には噛み合うまい。


 残念な話だ、と他人ごとのようにうさみは思った。


 そのあとすぐに、今回は自分も当事者であることを思い出し、眉間を揉んでからかぶりをふった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ