戦争初心者うさみ 84
気づくことが出来たのは、急に危険範囲が発生したからだ。
ほとんど予知に近いうさみの危険感知は数秒先の危険を感じ取ることが出来る。
そうでなければ、視界の外から現れた脅威に気づけなかっただろう。
うさみは足を動かして範囲を逃れながら飛んでくる方角を見る。
見覚えがある相手。魔法の鎚を持った赤い女戦士であることは、危険範囲の形状から推察していた通り。
しかし、以前飛んできたときの確認した大きな魔力の発動がなかった。
どういうことかと地上を見ると、射出点と思われる当たりに、一人周囲から遠巻きにされながら、額に手を当てこちらを眺めているように見える人がいた。遠くてちょっと詳細はわからないが。
もしかしてあの人が投げた?
物理的解決? それなら魔力を感じなかったのもわからないでもない。
しかし、四桁メートルもの高さまで人を投げ飛ばすとか高レベルの人ってやっぱり人間やめているなあ。
うさみは苦笑いした。
どっかん。
空中に爆音と爆炎が生まれる。
同時に赤い女戦士の軌道が変わる。
じっとうさみをにらみつけ、口をパクパク――。
「こ――が――め!――――!――――――!!」
うさみが移動するとそれに合わせて爆音とどろく。
「なに? 聞こえない!」
何か言っているのだが、彼女が生み出す音のせいでまるで聞こえない。
おそらくうさみの言っていることもあちらに聞こえていないだろう。
よける、どっかん、パクパク。
何言ってるのか気になる。
うさみはちょっと待ってと赤い女戦士に右手のひらを突き付けた。
ついでに女戦士の足元に足場を作る。うさみが自分用に使うのと同じものだがすこしばかり多めに魔力を使う。重いのと、長時間発生させるためと、重いのと。
鎧だけでもうさみ二人分近くあるんじゃないだろうか。
そして口を開きかけた時。
『来たようね。すごい音』
「あ、うん。ちょっとこっちに専念するね。こっそり入り込もうとしてる気配があるような気がするから気を付けて」
『そっちもね』
七割さんから通話が入ったので先に対応する。
余計なことかと思ったが、未確定の違和感も伝えておく。はっきりしない情報だが、上から俯瞰すると感じ取れるものがあり、しかし人が多いし距離もあるので見つけるのも難しいのだ。
後は任せるとして。
「ごめんお待たせ。なんだっけ、えっと。そうだ、さっきなんて言ってたの?」
うさみは手を下ろして赤い女戦士の人に向き直った。