戦争初心者うさみ 83
お盆は忙しかったんですがそれとは別に予約投稿するのをミスって投稿できてませんでした。ごめんなさい。
上空は割と楽しい。
景色がいいし、風も気持ちいい。
真下を見るとちょっと怖いし風が強すぎることもままあるが慣れと魔法でなんとかできる。
スカートの時は対策が必要だが、うさみはそれほどスカートをはかないので大丈夫。
地球時代は好んで飛行機から飛び降りるスカイダイビングとか正気の沙汰じゃない怖いと思っていたものだが実際に経験してみると楽しさが分かった。
ひどい高所恐怖症じゃなくてよかったと思う。
「なおも帝国軍は街道沿いに平原へ流入中、そのまま陣形を整えているよ。左右が薄くて真ん中が厚い感じ。真ん中後方あたりに指示を出してる集団がある。左右にも一つずつつながってるかなあ」
『了解よ。そのまま実況よろしく』
うさみはちょろちょろと上空を走りまわりながら、地上の様子をお味方に、というか七割さんに流していた。ある程度の距離までの二者間を繋ぐ魔法だ。
携帯電話じゃなくて糸電話方式だが。
別に走り回らなくても見通しはいいので情報収集に不便はないのだが、目立った方がいいかなと思うのと、じっとしていると何となく落ち着かないのと、実は走ってる方が空中にいるのが楽なので走っている。
今のところこちらを撃ち落とそうという動きはない。
問題の赤い女戦士の人は森に近い側の集団の中に見つけたが、今のところ来る様子はない。
前回と同じなら前兆があるので跳んでくるのを見逃すことはないだろう。
改めて戦場を見る。
街道沿いの平原であり、左右を森と川に、前後を丘と荒れ地に挟まれている。
こういった立地だと、隘路からの出口に待ち伏せるのがよさそうに思えるが、そうではないらしい。
強い少数が周りの足手まといを気にせず戦える状況が厄介なのだそうだ。
待ち伏せ側も数が制限されがちな場所よりも広いところで兵士の人を巻き込んでぶつかった方が相対的にむしろ有利になるとか。
ちょっとうさみの持っていたイメージとは違う話だったが、言われてみればそうかなあと思わなくもない話だった。
そういったわけで、お味方はすでに陣形を整え、簡易とはいえ陣地を作って待ち受けている形である。
横に均等に兵士を割き、中央一帯を柵を作って備えている。
左右には後ろにそれぞれ騎獣兵、騎鳥兵が控えているので兵力的には左右が手厚く中央が薄いのを防備で補っているように見えるだろうか。
鳥がまた上がって来たので黒眼鏡の魔法をかけてやるとふらふらと落ちていった。
十分ほどで魔法が切れるのでそのうちまた来るだろう。
お味方の戦術は、受け止めながら包囲して戦っていない兵を減らして数の不利を補おうみたいなもののように見える。
陣形を分厚く重ねれば重ねるほどその瞬間戦っていない兵が増えるわけなので、一理あると思う。
ただ、薄ければそれだけ一か所は脆いわけで、ついでに交代や補充要員も少なくなることになる。
さらには質的不利については改善されていないので、分の悪い賭けになるのではないか。
これをどう見るか。
指揮官の傲慢と取るか。
苦肉の策と取るか。
あるいは何らかの罠があると取るか。
「どうだろうねえ」
人が何考えてるかとか、それを見た別の人がどう考えるかとか、駆け引きとか。
それを踏まえて判断を下すとか。
うさみにはとてもではないが、極めて難易度の高いことである。
なんせその判断で大勢の命運が決まるのだ。
それも直接的に命のやり取りが行われて結果が出る。
うん。
偉い人はすごいなあ。うさみは思考を棚上げした。
なんてことを思っていると、何かが飛んできた。