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戦争初心者うさみ 80

「余がカ・マーゼ王国国王、ヴォルフ十四世である!」


 髭のおじさんが現れた。


 うさみたちが七割さんに報告に行くと、野営中のカ・マーゼ王国軍の天幕の一番大きいところに連れ込まれた。中では軍の首脳が集まり作戦会議をしている最中だった。

 見知った顔もいくつかある。

 七割さんはもちろん、宮廷魔導師長と部下ふたり。

 他にこの場にいそうな出オチ伯はいなかった。別の仕事をしているのだろう。


 知らない顔は大体おじさんやお兄さんで厳めしい顔をさらにしかめている人が多い。

 その中で中心になっているのが鎧を着て、大きな剣を持った人と豪奢な杖を持った人を侍らせた王様、ヴォルフ十四世なのだった。

 髭のせいで分かりにくいが、おそらく二十代、もしかすると前半かもしれない。

 がっしりした体格で身長も高く、なかなか見栄えがよい人だ。

 うさみが見たところ、けっこう強い。多分、斥候中に出会った赤い女戦士の人ほどではないが。


 ただ、このおじさんがエルプリを娶る予定であるとということを考えると、ちょっとかなりすごく犯罪臭がする並びになるだろう。

 下手に若いので生々しいというか。大学生と小学生が婚約しました、えっ? みたいな。政略上の都合だとわかっていても、見た目ロリコンである。ロリコン王。この世界では通じない単語だ。


 うさみの主観による適当な評価はさておき。


 他に鎧を着ている人と着ていない人がいる。

 七割さんなんかは黒く染めた皮の、あれは鎧なのかどうかわからないが、他は大体鎧を着ていない人が魔導師で、そうでない人が戦士とか騎士とかである……と一概に言えるわけではないらしい。


 あとで聞いた話によると、当番の人と王様は奇襲や夜襲に備えてずっと鎧を着ているらしい。見張りで起きてるならともかく、寝るのに苦労しそうである。



 ともあれ、そういう人たちが地図を囲んで怖い顔。

 正直うさみとしてはあんまり近づきたくない。

 大きな天幕でも、これだけ人がいると決して広くはないので、黒犬さんとの距離が詰まるのもつらい。

 だいぶ慣れてきたとはいえ、苦手なものは苦手なのだ。


 というわけで、報告は一応上司ということになっている黒犬さんに任せて、うさみは隅っこでぼーっとしていた。

 若干足がプルプルしているが、顔には笑顔を張り付けていた。

 意識して笑顔を作るのは、この世界に来て上手くなった。子ども扱いされるとき笑顔かどうかで扱いがずいぶん変わるので。


 そうやって時間が過ぎるのを待っていたところ。


「それでいいか、娘」

「えっ、あ、はい」


 いつのまにか自身に話が向いており、気づいた時には全員の注目が自分に集まっていて何か確認されたので、反射的に答えてしまった。


「うむ、では頼りにしているぞ」

「なに、エルフ殿ならどうにかするじゃろう」


 王様は大きくうなずいて、宮廷魔導師長が後押しする。


「金花殿、大丈夫でありますか」


 黒犬さん、あと顔見知りでないおじさんたちはどこか不安げである。


「……」


 黒檀さんは表情が読めない。


 とはいえ、雰囲気的に聞いてませんでしたとは言いにくい。

 となると答えはこうなる。


「がんばります」


 さて、うさみは何を任されたのか。

 後で黒犬さんに訊こう。いやな予感がするけれど。

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