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戦争初心者うさみ 75

「こんなかんじだけど」

「う、うむ。あの至近距離で、というのも驚くべき胆力だが」

「我々に、あのようにキラキラしく歌って踊れというのかこの子エルフは、と長様はおっしゃっている」

「私もちょっと、キビシーかな、うん、ちょっとだけ」


 うさみが声をかけると、気を取り戻した宮廷魔導師長たちが、まだちょっと怯んだ様子を残しながら答える。


 うさみは彼らの反応を見て、ちょっとやりすぎたかなと思った。

 歌って踊って、とやってるうちにだんだんノってきて、アイドルのコンサートかという勢いで演出してしまった。

 もちろんうさみはアイドル経験はないし、演出家経験もない。

 なのにノリノリで人前で歌って踊ったとか。


 我に返るとちょっと恥ずかしくなってきた。そういう意味で、やりすぎた。かな。


 顔を隠してしゃがみ込みたくなったが、我慢。

 なんともない顔をして当たり前のような態度をとればそういうものだと認識されるはずである。


「ええええええっとおおお」

「どうした」

「あーいやなんでもないよ今のは一例であそこまで近づかなくても相手腕の届くギリギリくらいでもいいし歌や踊りじゃなくても魔法を使う難易度が上がるならんでもいいし複数のことを同時にやる練習をしてたら魔法を複数並行して使う神の加護が身につくこともあるから」


 うさみは早口になった。


「多重発動の効率的な訓練になると!?」

「魔法の同時行使の有効な訓練方法はいまだ確立されておらず連続発動や魔導具を利用した疑似的な同時行使などはまだしも完全に同時並行して行使する多重発動に至っては我が国では天啓で得た者しかいないというのに訓練方法を持っていたとは、と長様はおっしゃっている」

「これはちょっと恥ずかしいのを我慢する価値があるかもしれないか……!」

「いやでも姐さんはキツ――」


 ごす、っと音がした。


 にわかにテンションが上がり、騒ぎだす宮廷魔導師たち。

 逆にうさみは思わぬ反応に対応が遅れた。


「いやまて、このエルフは本当に同時行使が可能なのか!?」

「先ほどの様子を見ただろう?」

「だがあれは連続行使でも可能では? いやそれはそれで驚くべき業だが」

「どうなのだ!?」


 大人の人に詰め寄られるとうさみはちょっと弱い。

 体格差のせいか。ゴーレムよりよほど小さいのだが。


「同時に使うのはできるよ」


 右手で水の玉を、左手で土の玉を作ってお手玉(ただし手を触れていない)をして見せる。


「同時だったか?」

「ううむ、一瞬でわからなかったが、こうしてそれぞれを動かしているのだ」

「仮に同時でなくとも、か」


 うさみから離れ、額を寄せて相談する部下魔導師たち。

 そして話がまとまるのを見守っていた宮廷魔導師長が言った。


「では歌と踊りとキラキラしくする光の魔法を教えてくれ」




 こうして。

 なぜか歌と踊りの振り付けを教えることになってしまった。



「どうしてこうなったんだろう」


 歌と踊りじゃなくてもいいって言ったのに。うさみは思ったがなんかそんな流れになってしまっていたのだった。


 後に改めて確認してタネはわかった。

 要するに神の加護を得るためには同じようにしないといけないという考え方があったのだ。

 訓練方法を継承して神の加護(スキル)を得ているこの世界のシステムにおけるある種の弊害なのだ。

 そうとわかっていたら、もっとはっきり止めていたのだが。



 ともあれ、おじいちゃんとギリおねえさんとおじさんたちにアイドルをイメージしてノリノリで踊った振り付けを教えることになったのだ。

 もし、この国が生き残ったら、今後国か世界が滅ぶまで宮廷魔導師がみんな歌って踊るようになるのかもしれない。

 うさみはそんな想像をして身震いしたのだった。

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