戦争初心者うさみ 67
結論から言えば聞くんじゃなかったと思った。
だいたいろくでもない事情と身勝手な都合によるものなのだから、すでに終わったことを今更掘り返して気分がよくなるわけがないのだ。
歴史家の人とかなら活用できるだろうが、うさみは歴史家ではない。大体農家か旅人で、たまに神官とかやるがメンタル的にはあんまり神官していない。
つまり気分が悪くなっただけだった。
まあ多少近隣の国際関係とかが分かったのが副産物だっただろうか。
カ・マーゼ王国を定期的に侵略しているのは帝国を名乗る国である。
同じ人類圏に他に帝国がないので帝国が固有名詞扱いなのだ。
帝国という単語は神話かというくらい大昔の逸話からとったもので、王より偉いんだぞ、くらいのニュアンスで受け取れば大体あっている。
その帝国だが、もともとはこの地域で最も危険な魔物が出る国だった。
いわゆる人類圏の最前線だ。他の国に魔物が出ないわけではないが、より強くより積極的に襲ってくる魔物の領域と接しているのである。
恒常的に強敵と戦い続けないと生き延びることが出来ない立地であり、兵が強い。
うさみが認識するこの世界の仕様上、より強い敵と戦うことでより強くなるので、そういう場所に住んでいる人が強くなるのは自然なことだ。
そういう最前線国は人口についても財政についても負担を強いられ続ける自転車操業であることが多い。
魔物と戦うには様々な資源や技術なども必要なのだ。
これが何かの拍子に好転し、一時的に安定することがある。
自国は余裕があるのに周囲には軍備が弱い国がずらりと並んでいる状態である。
輸出入で足元を見られたり、野蛮扱いされたりしている場合もよくある。
そんな状況で安定している間に、資源を確保したり豊かな生活を求めて行動することを責められるだろうか。いやそれで攻められた方は責めてもいいと思うけれど。
あるいは安定とは逆、もうどうしようもなく追いつめられることもある。
周りから奪わないと防衛線を維持できないとか本末転倒であるが、魔物戦線より人類国家との戦争の方が難易度が低いとするとどうだろうか。
そんなわけで戦争になる。
戦争になると、兵力の質では最前線国が圧倒する。
この世界だと一騎当千とか比喩ではなくありうるので、質の差というのは重大な要素だ。
その分被害が出た場合の立て直しが難しいので絶対に勝てるとは限らない。
だが、複数の国を平らげて拮抗もしくは優勢を保てた場合、強い魔物が出る場所を囲い込み国力も上であるという、一強国になるのである。
更にその後、国を治めるシステムをうまく構築できれば、ここの帝国のように地域一帯を支配するようになるのだ。
余談だが、うまくいかなかったら内部崩壊するし、時間がたってもだいたい内部崩壊する。