戦争初心者うさみ 62
「魔法使いにしては魔力が弱いと思っておったが。いや、だが、ゼロというのはありうるのか? いやしかし」
「何が問題なのか。エルフの魔力は感知しない? でも魔測球にそういう欠点があるという記録は知らないし……」
「魔力をすべて使い切っている可能性は?」
「気絶しますよ」
元祖さんと宮廷魔導師長がブツブツ言いながら考え込んでしまった。
人族やエルフを含め、人類に魔力がないというのはありえない。
少なくとも公には存在していない。
種族や個人で得意不得意はあっても、あるいは何らかの要因で魔法を扱えない者であっても、魔力そのものは保有している。
血が流れているのと同じように、魔力を持っているのは当たり前であり、そう認識されている。
「ということは」
「先生は人類ではない……!?」
「いやエルフだよ多分」
思わぬ結論に達する偉い人ふたりに対し、うさみは絶対の自信はなかったので多分をつけて答えた。
うさみが異物なのは事実だ。ただ、うさみにできることは他の人にもできるし、出来ないことはできないし、“うさみ”はエルフだったので多分エルフであってると思う。
それはおいといても。
「ちょっともっかい測ってみてよ」
「えあ、はい先生!」
魔測レンズが魔測球の反応を利用したものである、ということであれば、思い当たることがあったので試してみる。
「一二。ありました! 先生に魔力がありましたよ!」
「何、ワシにも見せろ。……八四? 計測結果が違うだと?」
「ええ!?」
うさみは以前、魔測球に触ったことがある。
そのときも、魔法は使えないと判定された。
しかし、ちょっと試してみたところ、魔測球は接触したものから魔力を吸収し発光する効果があると推測できたのである。
貴重だからとあんまり触れなかったので推測までだったが、今試して推測が補強された。
つまり、魔測球よりも強い力で抵抗していれば魔力を計測できない。
いやそれ以前に、魔測球が計測しているのは、体から漏れ出している微量な魔力であるのではないか。
逆に言えば魔力を漏らしていなければ計測不能なのだ。
一切漏らさないまでも、意識して放出を止めようとしたり、魔力を意図的に放出したりすることで計測値を操作できると思われる。
そして実際にそういう現象が起きている。
「ってことじゃないかなって」
うさみが推論を述べると、ブツブツやってた二人がキッと睨むようにうさみを見る。
「おいワシを測ってみろ」
「五九六……! 変わりました!」
「なるほど」「おお」「なんと」「逆はどうなんです!?」
すぐに試す二人と結果に沸く部下の人たち。
うさみはやっぱ仲いいんじゃないのと思いました。
などと思っていると。
「しかし、ゼロにはならないですね!?」
「うむ……」
「馬鹿なまさか魔力操作能力で小娘に負けているとでも!? と長様はおっしゃっている」
「言わんでいい!」
矛先がうさみに向いてきた。
視線が集まる。
「え、だって……」
これ言ってもいいのかな。
うさみはちょっとためらったが、視線の圧力に耐えかねて。
「いい歳してお漏らしするの恥ずかしいし……」
『ッ!?』
ぽろっと漏らしてしまった。お漏らし。