戦争初心者うさみ 60
「なるほど、大量の魔力を攻撃に変換するために儀式魔術に目を付けたか。錬金術士にしては目の付け所が良いようだ」
「残念ですがさっき言ったように! 先生の助言によるものです! いやあ、ホントさっきのことなのに!」
「あのさあ」
元祖さんと宮廷魔導師長がいちいち一言多くにらみ合うのでなかなか話が進まない。
どうも、王様が連れてきた元祖さんを含む人材と、元からこの国で働いていた人たちの間には軋轢があるらしい。
まあわからなくもない。
王様は国の存亡がかかった非常事態ということで強権を振るっているが、理があっても感情の問題は解決しないし、利害もそうだ。
王の相談役にして戦争においては切り札であり主力となる宮廷魔導師。
この国では王様の次の次の次くらいに権力がある立場である。
しかし、王様は七割さんたち自分の仲間をより信頼しており、戦争も解呪砲の採用で相対的に魔導師の立場が下がったことになる。
そんな話をにらみ合ってる横で双方の部下組から聞いた。
まあそういう話なら理解はできる。
滅びかけの小国の中での地位にどれほど価値があるのかとうさみは思うのだが。
守るべきものや大事なものがあるなら、権力も有効だ。
だがそれ以上の脅威として他国の侵略が迫っているのだ。
おじいちゃんたちも現状維持でいいとは思っていないだろう。実際に戦場に出て負け続けている本人たちだ。
そう考えると、いらだつのもわかる気がする。気がするだけだろうけども。
でもなあ。
と、うさみはため息をついた。
「今まで何があったか知らないけど、一緒に仕事するんだから協力しなよ。大人なんだから外面取り繕うくらいさ。おじいちゃんも自分で足を運んだんだからやる気はあるんでしょ?」
「はい先生!」「おじいちゃん……」
「返事はいいよね十四代目」
宮廷魔導師長はおじいちゃん呼びに何か思うところがあるようだ。
そんなこと知らないし。
元祖さんも返事はいいが、自分の都合を優先して押し通す人なのであんまり信用できない。
もしかしてこの調子で間を取り持つのがうさみの仕事になるのだろうか。
一番面倒なやつだ。
そんなことを思いながらふと見ると、部下魔女さんと元祖さんの部下のうち数人が、うさみを何かぬるい目で見ていた。生暖かいと言おうか。
「子どもに叱られる大人(上司)」
「「ブフォッ」」
部下魔女さんの一言に吹き出す部下さんたち。
子どもじゃないとは伝えていても、見た目が変わるわけではない。
うさみは頭を抱えた。
「と、いうわけで! この剣を解呪した際に生まれる魔力量を推定するので! これを攻撃に使えるよううまいことやってください!」
「大雑把すぎんか」
「仕事は丁寧にやるものだと長様はおっしゃっている」
茶番を挟みながらもどうにか話を進めてやっとここまできた。
途中から本来のフォロー役が仕事をさぼってうさみを眺めて楽しんでいたことに気が付いたが、時すでに遅し。すでに流れが定着してしまっていた。
部下魔女さん許すまじ。