戦争初心者うさみ 59
「で、この小娘は何者なのだ。エルフのようだが」
みんながお茶に口をつけたのを確認した後で自分もお茶に口をつけたお爺ちゃんが、厳めしい顔に重々しい口調で問いかける。
相手はもちろん元祖さんである。
お茶請けはジャムとビスケットだ。錬金術士たちと、部下魔女さんはさっそく手を付けているが、推定宮廷魔導師のお爺ちゃんと男の方の部下の人は手を出さない。
部下魔男さんの方はおじいちゃんの様子をうかがっているようだが、もしかしておじいちゃんの方は、硬いものダメだったかな。
「おばあちゃんだそうですよ」
「おじいちゃんの何倍かは生きてるよ」
「そういうことを尋ねておるのではない」
部下魔女さんは空気を読まない人らしい。
にらみ合ってるときも真っ先にうさみの荷物を持ってくれたし、自分ルールを優先するタイプだろうか。第一印象に過ぎないが。
「こちらに転んだ捕虜なのかと長様は確認しておられる」
「いやそれとは別ですね! うちの姐さんの部下です! 今は助言をもらうために協力してもらっているところで! 宮廷魔導師長様と同じ立場ですね!」
「なぬぃ!?」
会話はしてもずっと元祖さんとにらみ合っていたおじいちゃんがようやくうさみを見た。二度見した。
「長さまは小間使いかと思ったとおっしゃっておられる」
「そんなことは説明せんでもよい」
「失礼しました」
部下魔男さんも面白い人かもしれない。
それはさておき。
「お茶の用意とかしたからそう思うのは無理もないけど、人族は見た目に判断をゆだねがちだから気を付けたほうがいいよ。わたしみたいに人畜無害な相手ならいいけど」
うさみが言うと、なぜかみんな黙り込んだ。
しばらく黙り込んで、うさみがなんだこいつらと小首をかしげたところ、いくつかのグループに分かれてひそひそ話が始まった。
(人畜無害?)(子どもが背伸びしてるみたいでかわいい)(それが見た目で判断してるというのだ)(幼女ババア先生。これだ)(尊い)
まあうさみには全部聞こえるのだけれども。
実はみんなノリがいいのかもしれない。
元祖さんチームと魔導師チームでいがみ合ってるのもノリとか? それはないか。
利害の不一致で古くから対立しているのはうさみが述べたことだ。
「話を戻しますが! 金花先生は市井の大魔法使いなので! 宮廷魔導師長様と協力することを提案されたのも先生です!」
「なぬぁ!?」
「いや、大って何」
「とてもすごいということです!」
「錬金術士長殿は、とてもすごいとおっしゃっておられる」
「そのまますぎる!」
部下魔男さんは面白いどころか変な人だった。
「錬金術にも神殿の知恵にも通ずる方ですから!」
「そんなすごかったら人を呼ぼうとか提案しないで自分でやってるよ」
「そうですか!?」
なんかもう、ひどい。
自己紹介もグダグダである。
まあ予想通り、おじいちゃんが宮廷魔導師の長で、おつきの男女は宮廷魔導師でおじいちゃんの部下だった。