戦争初心者うさみ 58
翌日。
七割さんは忙しいので仕事は現状維持。
ということで今日も元祖さんのお手伝いである。
正直もうすることがなくて、これ以上はボロが出そうというか改めて考えるとすでにちょっとやりすぎた感じに出ているというかなので次の仕事に回りたかったが仕方がない。
ということで荷物を抱えて元祖さんのアトリエにやってきた。
ちょっと森まで出かけて取ってきたブツと朝市で買ってきたブツだ。
昨日のおやつが好評だったので今日も用意しようと考えてのことである。
しかし、目的地の方はそんなのんきな様子ではなかった。
元祖さんと知らないお爺ちゃんがにらみ合っていたのである。
ゾロッとした豪奢なローブを着たお爺ちゃんの後ろに、同じような格好だがいくらかシンプルな姿の、おじさんおばさんと呼んだら極端な反応が見られそうな年ごろの男女が控えている。
元祖さんの方にも、部下の人たちが後ろについていた。
目の下のクマが相変わらずだ。
「請われて来てやったというのに、その態度はどういうことかね」
「感謝はしておりますよ! 負け続きでなければ、そもそも我々の出る幕はなかったので!」
どちらもトップは張り付いたような笑顔を維持しているが、後ろが敵意マシマシの視線を送り合っている。
話の内容と外見から推測するに、ローブ三人組は魔法使いの偉い人だろう。
おそらく、宮廷魔導師とかそんな感じの。昨日の話からもう動くとは、暇なのかそれだけ重要案件だからか。
それはさておき、入ってすぐのところでにらみ合っているので中に入れない。
うさみはコンビニに行ったらちょっとガラの悪い人たちが入り口前にたむろしていた時の気分になった。帰ろうかな。
「あのー入れないんだけど」
「あ、ごめんなさいね。あら、大荷物」
まあ帰るわけにもいかないので声をかけると、ローブのおば……お姉さん……魔法少……うーん、部下魔女さん。
声をかけると部下魔女さんが気が付いて道を開けてくれる……だけではなく、うさみが抱える荷物を持ってくれた。やさしい。
「先生!」
「先生だ!」
「今日は何を食べさせてくれるのですか!」
奥に進むと、元祖さんの部下たち、あー、元祖部下さんたちが場所を開けてくれる。
そのまま作業台の一つを借りて荷物を置いてもらった。
「ありがとう」
「いえいえ。お嬢ちゃん、先生なの?」
「見た目じゃわかりにくいだろうけど、お嬢ちゃんというよりはおばあちゃんだよ」
などと言いながら、うさみは後ろを振り返る。
にらみ合い人数は半分に減って、残った人たちもうさみたちを見ていた。
「あ、どうぞ続けて」
と、元祖さんたちに言ってから、近くの元祖部下さんに尋ねた。
「えっと何人かな。十六? カップたりる?」
「大丈夫です! 出してきます!」
元祖部下さんたち、昨日よりも元気だなあと思いながら、魔導具のポットでお湯を沸かして香茶を淹れる準備をする。
森でとってきたブツである。魔法でではあるが加工済みで、ブレンドまで済ませてある。
時期に左右されはするが、森で採れるものでお茶をするのも慣れてきたものだ。
白湯では味気ないのでたまに凝ったりすることもあるのだ。
昨日教えた【花香水】の魔法でもいいがバリエーションが欲しくなることもある。
うさみが作業を進めると、元祖部下さんたちや部下魔女さんが手を貸してくれた。
数が多いので助かる。
そしてお茶の準備ができてから。
「お仕事もいいけど一息つこうよ、ね」
改めて、トップの二人に声をかけた。
もうにらみ合っていなかった。