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戦争初心者うさみ 57

 捕まっているエルフのところでボロクソに言われた。

 予想の範囲内である。

 あるが。

 うさみはへこんだ。


 どれくらい罵声を浴びたかというと、いつもならこんな目に遭ったら二、三十年引きこもるくらいの。

 引きこもろうかな? ダメか。


 そして三か所回って一通り罵倒された後、本命のエルプリを訪ねた。

 エルプリに心配かけたくはないので、ペチンと顔を張って気持ちを入れ替える。

 まあこれからやることを考えれば心配の心配をしてる場合じゃないのだけど。



「というわけ」

「正気かの」


 うさみが事情を説明すると、エルプリに一言で切って捨てられた。

 心配どころか正気を疑われた。


「紅の森の秘宝を使い捨てにするなどとんでもないのじゃ。……まあ確かに何千年か使う機会がなかったものじゃが。というか、実際に可能なのかの?」


「可能不可能で言えば現状で可能だから、手を出さなくても強行するだろうね。ただ、失敗する可能性があるのと失敗したら戦場周辺がどうなるかわかんない。場合によって周辺ではすまないかもしれない」

「どうなるのじゃ?」


 魔剣死紅は魂を喰らう剣だ。


「推測できる範囲で順当なとこではこの辺り一帯の生き物の魂がなくなる、とかかな」

「な、なな」


 解呪し解放した魔力の制御に失敗したら、まず考えられるのはもともと持っている方向性での暴走だろう。

 魂を喰らう剣から解放された魔力であれば、魂を喰らうだろう。


 生半な魔力では大規模な被害が出たりはしないが、魔剣死紅はただでさえ強力な魔導具であり、また三千年そういうものとして封印されてきた神器級魔導具だ。

 秘められた魔力も相応。

 なんなら解呪しなくても周りで死人が出たりしてもおかしくないような物体だ。

 解放されれば十分災厄の火種になりうる。


 が、錬金術の視点ではそこまで酷いことになると考えないだろう。だからやる。



「それだけの魔力を攻撃に使うというのも恐ろしいのじゃ」

「じゃあやめとく?」

「が」


 が?

 エルプリは一度言葉を切ってため息をついてから続けた。


「止められぬのじゃろ? それなら協力した方がなんぼかマシじゃな」

「代案用意できなきゃ何を言ってもね。嫌な判断させてごめんね」


 解呪砲がカ・マーゼ王国の秘密兵器にして中核戦力扱いされているのは、紅の森襲撃の結果から推測できる。

 否定するなら対案と実績が必要だが、それだけの発言力はうさみとエルプリにはないのである。


 こうして、エルプリから魔剣死紅の謂れを聞き出した。


 しかし、子どもにこういうことさせてると教育に悪いんじゃないだろうか。

 エルプリが感情より周りの都合を認識して判断を下せることをうさみは少し哀しく感じた。


 なのでそのあと時間いっぱいエルプリをくすぐって遊んだ。子どもには夢中になって馬鹿をする時間とか大事だろう。多分。

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