戦争初心者うさみ 54
五百年前、魔王を倒し勇者と呼ばれた者がいた。
国を興してカ・マーゼ王国となった。
遥か昔。
エルフの森に、勇者が剣を森に封じた。エルフはこれを守っている。
「という話でした!」
「うん、中身ないようなもんだね」
元祖さんが語るのは、王様から聞いた話であるらしい。
ひとつはカ・マーゼ王家がが五百年ほど前の勇者の末裔であるということ。
もうひとつは勇者が剣をエルフに預けたのかあとから住み着いたのかとにかくエルフが守っているということ。
前者は王家に伝わる伝承で、ものすごいザックリした内容のおとぎ話がこの地方にひろまっている。
悪い魔王を倒した勇者が王様になりましためでたしめでたしみたいな。
あとから脚色が入った詳細版も伝わっているらしいが脚色がひどくてなんともかんとも。
後者は何代か前の王様がエルフから聞いた話なんだとか。また聞きだ。
ただ、近隣のエルフの森に、勇者から預かったという伝説の剣が保管されているのは確信があったらしい。
少なくとも五十年以内には確認されていたという。
外交で訪れた王家のものが実際に見たらしい。
カ・マーゼ王国とエルフとは特別懇意ではなかったが、近くにいれば関わることもある。
エルフの言い伝えがカ・マーゼ王家に記録されていたのも、そんな少なくない交流の一部である。
「『勇者の持ち物ならばカ・マーゼが持つのもまた道理であろう、何なら抜けるかもしれぬ』と! 誰も抜けませんでしたが!」
巨岩に突き立った剣を抜くことが出来ずに岩の方を削って今そこに転がっている。
ある種呪物といってもよい、魂喰いの剣で戦った魔王というのもあんまり想像したくないが、まあそんな剣なので封印するのもわかる。その辺にあったら危ないだろう。
必要があれば取りに行くというのもわかる。
使い道は想定されていたものとは違うだろうが。
どうあれ、剣について大した情報がないのはよくわかった。
「それなら知ってる人に訊けばいいんじゃない?」
「王家の情報を調べられるよう申請しましょうか! お願いします!」
「はっ!」
元祖さんの部下の人が走っていく。
クマ作ってる状態で走ったりして大丈夫だろうか。
「もっと知ってそうな人がいるよね」
「はて!? だれでしょうか!」
「エルフ。五百年前なら直接知ってる人いるんじゃないかな」
「ああ! ……あー」
元祖さんの勢いが落ちた。
持ち主というか、守っていた本人であり、千年生きる生き物だ。
この国が捕まえている中に知っているものが混じっている可能性は十分ある。
そして、住まいを焼かれて捕虜になっている。
焼いたのは目の前にある解呪砲だ。
なんか今まで何も感じてないのかと思うような態度だったが、一応製作者として思うところもあったのか。
「先生は……」
「わたし旅エルフで、あそこのエルフじゃないから全く知らないよ」
「うーん、そうですか。 ではちょっと聞いてきます!」
大人しくなったのはわずかな時間だったらしい。
すぐに勢いを取り戻した元祖さんは、いきなり立ち上がってうさみがなにか言う間もなく、部屋を飛び出していった。
王家の資料は部下に行かせて捕虜からの聞き取りは自分で行くのか。
だからなんというわけでもないが。
「それにしても、なんか違和感あるんだよね。なんだろう」
うさみは小首をかしげた。
「あとわたし、どうすればいいのかなこれ」
目に隈作って働いてる人たちの中に置いて行かれた。