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戦争初心者うさみ 53

「では、先生は魔導師なのですか!」

「魔導師? ってなんだっけ」


 元祖さんが妙におおげさに驚くのでうさみは首を傾げた。


「ま、魔法自在の魔法使い、魔法を導くもの、魔法を創造できる術師!」

「あー、いや、そんなたいそうなことではないよ?」


 魔法使いの呼ばれ方は時代と場所でいろいろある。同じ「魔導師」であっても違う意味を持つこともある。

 今回の場合、魔導師は、古代魔法王国並みの魔法使いであるという意味だ。

 つまり魔法を一から作り出せるということ。

 魔法衰退後にこれが可能な魔法使いは極端に減っており、仮に居ても魔法王国時代の魔法の再発見であることが多い。それで問題があるかというと特にないが。

 ただ、神様の加護に頼らず魔法を使うことが出来るというのは奇異なことであり、人によっては尊ぶし、また人によっては危険視することもある。


「しかし! あたかも見てきたような語りに知識!」

「いや、知ってる人に訊いただけだから」

「その外見も夜を偲ぶ仮の――」

「これは自前」


 なんだか興奮してぐいぐいと近づいてくる元祖さんの額をペチンしてうさみは繰り返した。


「自前なの」

「あーはい」


 ペチンで元祖さんが落ち着いた。


「ちょっと人が知らないことを知っていただけで、騒ぐようなことじゃないの。エルフ長生きで、わたしは旅人だからね」


 あんまり持ち上げられてボロが出たらまずいのでうさみはごまかす方向で進めることにした。

 だったらこんなに張り切って長々話をするなという考えもあるが、まあ勢いというかノリである。

 話し出したら止まらないこともある。

 見かけはともかく年寄りだもの。うさみ。



「まあ、先生がそうおっしゃるならば! 話を戻しましょう! 解呪砲の改良です!」


 本題である。


「魔法使いや神殿に知恵を借りよということでしょうか! 正直あまり折り合いはよくないのですが!」


 まあそうだろう。

 話を総合すると、元祖さんは有名な錬金術士であるだけでなく、現王様が連れてきたよそ者でもあり、また王様が重用している人物でもある。

 地元の魔法使いや神殿がいい顔はしないのは当然である。


 とはいえ。


「王様に仕えてる魔法使いの人に王様経由で命令してもらえばいいんじゃないかな」

「ばかな!」


 ばかな。と叫んだのは元祖さんではなく、室内で仕事している人たちの一人だった。


「我々がこうして必死で作り上げたものですぞ! 他の手を借りて手柄を奪われるなどありえない!」


 目の下に隈を作ったおじさんであった。

 疲れているのがありありとわかる。他の人たちも似たようなものだ。

 ブラック企業かな。

 まあ確かにものすごいがんばって完成間近にこぎつけたものの成果を他の人に持っていかれては気分はよくないとは思うけれども。


「それわたしどうなるの」

「先生は保護観察中ですから!」

「あ、そう」


 うさみは手柄を上げてやっと仲間と認められる立場であり、手伝ったところでここの人たちの取り分が減るわけではないのだと。

 そうかなあと思うが、さておき。


「大規模な魔力を扱うのが一番上手なのは戦争用の儀式魔法を扱う人たちだと思うんだよ」


 一度に大量の魔力が発生するのを処理しきれないのが解呪砲の課題である。

 儀式魔法というのは、複数の魔法使いが集まって、単独ではなしえない大規模な魔法を使うためのものだ。

 用途は多いが、戦争でよく使われるのと、そもそも魔法使いを大量動員することができる存在が限られている。おおむね国かそれに準ずる組織でなければ運用が難しい。


「わたしも多少は魔法の心得はあるけれど、組織に属してこなかったから、そっちの知識や技術には明るくないんだけど」


 まあ嘘ではない。必要なら力押しなので。


「伝説級の魔導具から発せられる魔力量を考えると、基本省エネ志向の錬金術だけでどうにかしようっていうのは研究時間が足りないんじゃないかな」

「省エネ?」

「えっと節約的な」


 魔法使いはできないことがあれば出力の向上を考えることができる。儀式魔法もそのための技術の一つだ。

 錬金術士はむしろ魔力の出力に制限がある場合の方が多いのでパズル的に頭をひねることが多い。

 時間があればともかく、得意分野でない研究に時間を長々と裂けるかといえば、出来ないからうさみが呼ばれたのだから答えはわかっている。


「魔力の維持管理や魔法の構築を補助するのも、魔法使いの得意分野だから、探せば補助するための技術や道具はあるはず。それと」


 元祖さんは腕を組んで考えこんでいる。

 声をあげたおじさんも眉間にしわを寄せていた。


「解呪する物の謂れを調べたらヒントがあるかもしれないかな。」

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