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戦争初心者うさみ 52

 魔法を扱うにあたって、世界の法則を利用すれば容易になる。

 世界の法則とは神々の事跡に基づくものだ。

 ならば神話が参考になる。


 現象から世界の法則を導き出そうという、錬金術の学問的側面もまた、喪失、秘匿、散逸した神殿や魔法王国時代の知識の再発見、また新たな発見もありうる。


 また、神様の加護、世界の真理という先人の研鑽の結果であるが、これもまた一つの現象だ。

 何が言いたいかといえば、幾度も再現され当然となった現象は世界の法則に準ずる元と考えてもよい。



 さて。

 うさみの森の結界は、“毒蛇が出る怖い森”と“快適な空間”を設定するものだ。

 常識的に考えれば相反する二つのであるが、これはちょっとした頓智で実現できる。

 まず森とは、読んで字のごとく、多数の木で構成されるものだ。

 次に、木の生命力は強く、例えば有名なところでソメイヨシノのように接ぎ木によってクローンのごとく繁殖したり、あるいは枝を地面に刺すだけでも新たな場所に根差す種の樹木もある。

 ところで同じ木の枝を元にした木は同じ木である。

 同じ種類ではない、同じ木だ。

 であるならば、これを多数大地に根付かせ森とすれば、そこは同じ木の領域であり、一つの結界となる。

 これは神話の中で樹木の神が木を生やすことで境界を作ったという逸話にも倣っており、つまり世界の法則でもある。


 さて、同じ木の、枝の一つに毒ヘビの抜け殻が絡んでいる。

 抜け殻があるということは、ヘビがいるということになる。

 木の他の枝に巻き付いているのか、近くの茂みにでも隠れているのか。

 どちらにしても木の近くにいる。

 ところで一つの結界であり、全体が一つの木でもあり、一つの森でもある。

 つまり、木の近くに毒ヘビがいるということは、結界全体に毒ヘビがいる、かもしれないということだ。

 毒ヘビの森がこれにて完成する。


 さて、それはそれとして。

 同じ木から分かたれた枝は同じ木の一部であり、また森を構成する一部でもある。

 であるならば、その枝を身に着けるものはすなわち森の一部である。

 つまり結界を構成する木々の一部である。

 森は木々にとってすごしやすい環境である。

 しかも森を構成するのは同じ木であるのだから、なおさらすごしやすいのだ。

 したがって、森の、木の、結界の一部たる枝の保持者はすごしやすい環境を知覚することになる。

 “快適な空間”の完成である。


 拡大解釈と不自然な歪みは魔法によって解決される。

 そのための魔力は規模に比して少なくて済む。

 森には木々が生み出す魔力があるのでこれを利用できること。

 太陽や月の光に含まれる魔力もまた利用できる。

 さらに“自然なこと”の積み重ねであるので必要な魔力は大きく緩和される。

 また、結界とは領域を区切って内外を隔てるものだ。

 隔てたうえで、内側の環境を都合よく設定するのが神様の加護、世界の真理において多く使われるものである。

 であるから、結界を形成することそれ自体が内部の操作の助けになる。

 それにだいたい森というのは人を惑わし迷わすものなのでこういった効果とは相性が良い。


 というわけで、落葉の季節が来て環境が変わるまで効果が維持される結界が完成したというわけだ。


 錬金術な部分が見えないように思えるかもしれないが、ちいさな“当たり前”を法則として定義してきたのは錬金術の学問的側面から来たものもある。

 神聖魔法だけでは高位の神官の力が必要だ。

 魔法だけでは大規模な魔力消費が必要だ。

 錬金術だけでは、多くの素材が必要だ。

 三つの要素を組み合わせることでかなりの手間を省くことが出来ている。

 弱点も多いが、魔法的に結界の探知をされにくく、短期的な利用には十分。


「だいたいこんな感じ」

「すごいこじつけのような!」

「そういう違和感を魔法で均せるから魔法は便利なんだよ」

「ッ!」

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