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戦争初心者うさみ 47

「ところで、これをどうを改良するの? ちゃんと稼働しているならわたしなんかが口を出すことはないと思うんだけど」

「それはですね!」


 元祖さんは鉄の箱の向こう側にうさみを導いた。


 そこには。


 岩でできた鞘にしまわれた剣が無造作に置いてあった。


「エルフの里で回収された魔導具の剣です! これ以上は岩が削れないんですが!」


 鞘ではなく刺さっていた岩の名残だったらしい。

 柄の装飾をみると、柄頭の位置に黒い石がはめ込まれており、そこから鍔にかけて獣のような何かの口を思わせる形状の装飾が為されていた。


「すごい禍々しいね」


 獣と断じることが出来ないのは、どちらかというと禍々しい方向性の、見ていると心が不安定になるような、“のような何か”とつけたくなるものだったからだ。

 ほら、今もなんだか、うさみの中から何かが吸い込まれそうな……。


「これが勇者の武器なんて驚きですよね!」


 おそらく魂喰らい系。おばけ(アンデッド)対策に便利なやつだ。もちろん普通の生き物も殺せる。

 切られると低級な手段では再生できなくなるし、非実体のおばけも倒せるのだ。

 無限に復活する不死の魔王とか出たら、こういうのがないと苦労するのだろう。


「勇者の武器というなら、これが必要な魔王がいたんだろうね。……これの岩を全部削りたいとか?」

「いえ! そうではなく! 現状の、あ、これ、解呪砲という名前なんですが!」

「解呪砲」

「はい! この剣の魔力量を測定したところ、上位遺産級から下位神器級の魔力が内包されていることが分かりまして! 改良しないと発射時に周りごと吹き飛ぶことになりそうなのですよ!」


 現在の錬金術士が使う専門用語は知らないが、この剣が強すぎて発射時に解呪砲が耐えきれなくて爆発するということだろう。

 実際に起きるのが爆発かはわからないが。


 だが。


「それなら素材を変えればいいんじゃないの? もっとお高いやつあるよね」


 錬金術につかう素材にも種類とというものがあって、同じ用途にしても選択肢は多くある。

 うさみの見たところ解呪砲の素材の種類は中の上、質は上の中といったところ。

 容易に手に入るなかではいい部類だが、それは量産品に使う範疇だ。

 一品ものを作るのならもっといいものを使えるだろう。

 単純に予算が足りないのだろうか。


 と思ったのだが。


「物が手に入らないのです! 素材の流通元と戦争しているので!」

「あー」


 やっぱり戦争って……。

 うさみは思わずはしたない表現をしそうになったのを我慢した。


 高品質の素材を隣国からの輸入に依存していたということなら仕方がない。

 鉱物などは地理に依存するし魔物など生物由来の素材も、魔物戦線の最前線を持っている地域が品質では上になる。

 こと強度などの話になれば特に強い魔物の方が良質な素材になる場合が多いからだ。


 逆に言えば魔物との戦いがあまり激しくない比較的平和な場所であるとも言えるのだが、人類同士の戦争となったら話が変わってくるだろう。


「なんでそんな所と戦争してるの。って、攻めてくるからか」

「みたいですね!」


 物流の上流を握られている相手との戦争。

 第三者からみるともう降参すればいいのにと思うが、当事者からするとそういうわけにもいかないのだろう。


「そういうわけでですね、そのへんにあるものを利用してあれだけの大結界を設置した先生の意見を戴きたいと思いまして!」


 わざわざうさみの前にひざまずき視線を合わせてくる元祖さん。

 なんでこの子こんな元気なんだろうと、関係ないことをうさみは思った。

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