戦争初心者うさみ 45
時間が押しているので保留、結論出すまで師匠と呼んだら絶対に弟子にしないという条件で話がついた。
「先生よろしくお願いします!」
「おのれ」
師匠ではなく先生と呼び始めた元祖さんに対し、うさみはぷんすかと怒りを示した。
しかし、相手はまるで堪えた様子もない。
うさみが友達の弟子の弟子の(中略)弟子の弟子に対してどのような態度をとるか決めかねているのもあり、ノリでぷんすかしているのもある。
というのも。
おばけですら祟るのは七代までというのがメジャーなのである。
であれば、十四代というのはもう他人だろう。
ん? だがすこし待ってほしい。
仮にAさんやらかして、その七代子孫Bさんまで祟られたとする。
BさんとAさんは七代、つまり七親等だ。
ところでBさんとは別の系統の七代子孫Cさんも祟られている。
BさんとCさんはAさんまでそれぞれ七親等だが、系統が違うのでBさんCさん間は十四親等だ。
さて同じように祟られているBさんとCさんは他人といえるだろうか?
十四だ。十四違うのに。
だが同じ因果で同じ目に遭っている相手であれば他人ではない、と考えることもできるのではないか。
ならば十四親等は他人ではないということにならないか。
であれば友達の弟子十四代目も他人ではない……?
まあそれはそれとして、こちらの意志を無視してぐいぐいくるのは気に入らないので怒りを示しておこう。
こういう図々しい人はちょっと邪険にしても大丈夫だろうぷんすか。
ということだ。
うさみがぷんすかしてもかわいいだけなので威圧にならないのだがそれはそれ。
さておき。
七割さんから出た指示は、元祖さんに協力することだった。
「かの有名な錬金術一門の当代が知恵を借りたいということだから、ちょっと試してみてくれる? ダメなようなら別件に回ってもらうから」
有名だったんだ。知らなかった。
うさみの友達のころはそれほどでもなかったのだが、代々のなかに商才があるものがいたのかもしれない。
というかそんな有名であるなら、こんな滅びかけの国で裏組織みたいなのに所属しているのだろうか。
しかも、名跡を偽らず名乗って参加しているらしい。
「その有名な人がなんでこんなところで裏仕事に関わってるの?」
聞いてみた。
すると、この場にいるうさみを除く全員が、きょとん顔になった。
つまり、七割さんと、元祖さんと、うさみのために部屋の隅っこまで下がって空気になってくれている黒犬さんである。
「誤解があるようね」
「我々の母体は王様の友人関係でありまして、別段裏の組織というわけではないのでありますよ。それぞれ得意なことで協力しているのであります」
「なので、あたしは普通に錬金術やってるわけです先生!」
そういえば当代の王は王位継承するまで国外にいたとか、いや追放されたんだっけ? 放浪だったか? なんかそんな話を最初に調べた時に耳にしたような気もする。
ここんとこ一番の驚きの新事実にうさみは眉を八の字にするのだった。