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戦争初心者うさみ 43

 丸一日休みをもらった。


 忙しいんじゃなかったのかと思ったが、


「先日の件の始末で各所と折衝しないといけないの」

「ああ、じゃあできることないね」


 折衝というのは、ある程度のことを把握していないとできないことだ。

 新人で人質を使って働かせているうさみが関わるべき仕事ではない。

 更に言えばうさみは外見で侮られるので交渉事には向いていない。

 知名度があれば逆に利用できる場合もあるが、今生今回のうさみは無名な放浪エルフである。


 ならば別の仕事をさせれば、となると、ちょうどいいのがない。

 予定通りなら近いうちに黒犬さんと謎の人が帰ってくる。

 森の件の報告と、めんどくさそうな気配がする謎の人との面会があるため、うさみを長期派遣するのはよろしくない。


「明日にはなにか都合つけるから」



 というわけだ。




 しかし。


「なにをしようかな」


 エルプリと会うにしても、向こうの予定がある。

 面会はするが丸一日潰せるほどではない。会ったばかりでもあるし。


 街を散策するのはどうか。

 現在の状況を考えてみる。

 エルフが戦利品として引き回されたあとなのでエルフですよと言いながら歩くのは変に注目されそうだ。


 また、スパイが捕まった直後であり、後始末のために各所が動いている。

 治安維持側の関係者はピリピリしているだろうし、残党や協力者の摘発のために動いているものがいるかもしれない。


 魔法で姿をごまかして散歩していたら、捜査している人の魔法感知に引っかかって拘束されて保証人として忙しい七割さんを呼び出す羽目になってちょっとこの忙しいのになにやってんすかぷんすかと怒られる未来が見える。


 そもそも子ども一人で出歩くのは推奨されないのが常識なので、普段は目立たないようにしたり、逆に目立って地域のマスコット枠をほしいままにしたりするのだが。

 前者は今の世情だと逆に声を掛けられそうだし後者は時間がないし、あんまり目立っていい立場でもない。


 友達とも遊べない街をうろつくのも都合がよろしくない。

 一日の休み。

 そんなの何すればいいというのか。


 引きこもってるときは草むしりとかやることいっぱいある。

 こういう状況でなければ食べ歩きとかその地方の遊びに混ざったりとかするのだが。


「あ、そうだ。神殿行こう」


 しばらく考えていたうさみは一つ思いついた。

 神聖魔法を覚えてこようと。


 神聖魔法が使えていればエルプリの護衛をしていたエルシスを回復させることは容易だったはずである。

 今後のことを考えれば怪我人を見ることも多くなるだろう。

 不本意ではあっても戦争に関わるのだ。


 神聖魔法を使えるようにしておいて損はないはずである。


 うさみは早速神殿に向かうことにした。

 無目的な徘徊でなければセーフだ。

 一応耳は髪の中に隠して目立たないようにしておけばいい。

 耳が見えなければうさみはただの可愛らしい子どもであるから、人さらいに遭う危険くらいしかないんじゃないかな。









「まさか、お金が足りないなんて」



 うさみは神殿を追い出されて、頭を抱えていた。


 神殿に行ったうさみは、手持ちのお金をすべて金銭神に奉納した。

 大きな額ではないが、銀貨の聖印くらいはもらえる額だったはずだ。

 普通なら。


 悪かったのは、今生において、過去一度金銭神の神官になったことがあり、義務の放棄で資格を取り上げられていたのを忘れていたことだ。


 神官の資格は神によってそれぞれに定められた行為を継続して行わなければ信仰心が足りないとして失われるのだ。

 これは神殿ではなく、もっと上、神聖魔法のシステムとしてそうなっているので、ごまかしがきかない。

 金銭神の場合は一定以上のお金を消費すること。

 使うためにはお金を稼がないといけないので、金銭神の神官はがめつくなり嫌われるのだが、それはさておき。


 うさみは今回の旅に出ようと思いつく前に、しばらく引きこもってのんびりしていた時期があるのだった。

 たった三十年足らずのことなのだが、神官の資格を失うのには十分だった。


 失った資格を再度得るには、喪失期間分奉仕しなければならない。

 金銭神の場合はそれだけの金額を奉納すればいいのだが、手持ちのお金では何十年単位の期間分には満たなかったのである。


 エルフなどの長命種に神官が多くなかったりするのだが、同じ理由にうさみもハマってしまったのである。



 そして、お金を奉納しても神官になれなかったようなものに対する神殿側の扱いは冷たいものだった。




「困ったなあ。やることどころかお金もなくなっちゃったねえ」


 うさみは肩を落として拠点にかえってふて寝した。

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