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戦争初心者うさみ 31

お待たせしました。

毎日投稿は難しいかもしれません。

今後ともよろしくお願いします。

「“金花”ちょっと、待つであります、早いであります」

「えー」



 うさみと暗号名“黒犬”こと黒犬さんは森の中を進んでいた。

 樹上を移動するうさみを黒犬さんが追いかける形である。


 犬と相性が悪いということは理解してもらえたものの、組み合わせの変更は認められなかった。

 「見張りを兼ねてるから、ちょうどいいわね」と、上司の暗号名“黒檀”こと七割さんはさらっと言い放ったのだった。ひどい。


 そういうわけで“金花”というお金みたいな暗号名をつけられて、任務を与えられたのである。


 その任務とは、次の戦場になると考えられている場所を偵察し、迂回できる経路を見つけることだ。

 より具体的に言えば、森の抜け道を探せという話である。


 敵対している国とカ・マーゼ王国を繋ぐ街道が通っている、ドッコダッカ平原という場所が次の戦場予定地らしい。

 ここに隣接する森を通って横なり後ろなりに出て攻撃しようという狙いなのだろうと想像できる。

 戦略はしらないが、奇襲で挟み撃ちという戦術が強いのはうさみでもわかる。


 しかし森というのは本来人族の生活圏ではない。

 平野部に比較して魔物も強い。

 なので距離を取ってそれなりの関わりで恩恵を得たり被害を受けたりする関係だ。


 しかし、エルフや獣人(の一部)は森に住んでいる。

 森に適性があるからだ。

 エルフは樹に関りが深い種族だし、森に棲む獣の特徴を備えた獣人もまた森に住むことを苦にしないのだ。


 なので、エルフや獣人に抜け道を探させるのは理にかなっている。



 ように思えたのだが。



「“金花”、少し休憩するであります」

「はーい」



 声をかけられて、うさみは樹上から音もなくふわりと跳び降りた。

 うさみと黒犬さんは二メートルくらい離れてそれぞれ木の根元に腰掛ける。


 この二メートルくらいというのがうさみの許容限界だった。

 これより近づくとぷるぷる震えがくる。

 人族よりの外見で耳だけわんこの黒犬さんでなければもっと距離を取る必要があったろう。

 結構頑張っている方なのだ。うさみ的に。

 できることなら認識範囲内に居てほしくないくらいなので。


 それでも二メートルというのは会話するにも不便な距離だ。が、背に腹は代えられない。


「“金花”は樹の上を跳んでいるのに元気でありますなあ。その体のどこにこれほどの体力があるでありますか」


 水分を補給して一息ついた黒犬さんが尋ねてくる。

 そういうことを言いながら自分もあまり疲れているようには見えないじゃないとうさみは思いつつ。


「たぶん、体力はある方だから。森だし」


 エルフにとって森は庭のようなものである。

 庭を散歩するのに苦労するようなことはない。

 特に訓練とかしなくても、百年も森で生活すれば住処の近所の森のことは自由自在になる程度には生まれつき適性がある。

 三百年もいろいろな森ですごせば、自分の住処でなくても結構わかるようになる。


 というような話をうさみがしたところ。


「であれば、“金花”にはこの任務向いていないでありますな」


 と、黒犬さんがため息をついたのだった。

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