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戦争初心者うさみ 30

多忙につき数日休みます。

 翌日。


 エルプリは七割さんと親交の深い貴族のもとで寝泊まりすることになり、うさみは七割さんたちが使っている街の中にある隠れ家の一つに部屋をあてがわれた。

 これは、エルプリとうさみに対して求められていることが違うからである。


 エルプリの役割は、紅の森のエルフを懐柔するエサだ。

 紅の森の末っ子であるエルプリは森のエルフにとって特別な存在なので、これを利用しようということである。


 一方うさみは実働部隊としてスカウトされた身であるので扱いが違うのは当然のことだった。


 エルプリが軟禁される予定の場所は教えられているし、いつでも訪ねる権利は保証させている。

 互いの信頼関係が悪化しなければこの状況は維持できることになる。


 なお、現状信頼関係はゼロなので、ワンアウトでゲームセットであるため、注意しなければならない。




 というのがうさみの現状認識である。

 が、具体的な部分に関してはまだ聞かされていない。


 変身の魔法、というか変装が買われていたようなので関連することをさせたいのだろうが。

 考えられるのはスパイ行為だろうか。

 忍者忍者。



 うさみはニンニン考えながら、隠れ家の会議する部屋はここねと教えられた部屋に向かった。


「来たわね」

「うん」


 室内には七割さんと、昨日めっちゃにらんできた部下の獣人族のひと、さらにもう一人別の獣人族のひとがいた。


 七割さんは相変わらずのガングロ銀髪で凶悪なスタイルがよくわかる格好だ。


 獣人族の人は熊系の獣人だろう。ほとんど直立した赤茶色の毛皮の熊のような見た目である。服を着ていなければ獣人族だとわからないかもしれない。よく見れば骨格や手の形が違うのだが。

 睨まれると割と怖いが、よく見ると目がつぶらで、結構かわいいかも、と思わせておいて牙を剥くと凶悪な形相となってやっぱり怖い。

 熊の雄雌がわからないのでこの人の性別もわからない。


 そして最後の一人は見た目人族よりの獣人族。

 黒い獣耳以外、あ、尻尾も生えてる、それ以外はほとんど人族と変わらないように見える。

 耳を隠せばごく普通の十代の真面目そうな女の子に見えるだろう。

 問題の耳の形は、犬。

 でなかったら狼か。



 うさみはちょっと嫌な予感がしてきた。



「さて、それじゃまず紹介から。私は“黒檀”。見ての通りエルフ。貴女の直属の上司になるわ。よろしく」

「よろしく」


 本名は言わない流れらしい。

 なんだっけコードネーム? あ、暗号名だっけか。


「そっちが“赤熊”。腕力担当だけど頭もいいわ。何より忠誠心が高いから気を付けてね」

「よろしく」

「ふん」


 赤熊さんの声は男だった。

 ところで気を付けるって何を。

 うさみを警戒しているのがまるわかりなのでそのことか。

 悪さをしたら相応の報いを与えてやるぜみたいなことか。

 獣度たかいと感情読みにくくて、実際気を付けないといけない気はする。


「こっちが“黒犬”。貴女の当面の相棒よ」

「よろしくであります」

「よ、よろしく……やっぱりかー」


 うさみは頭を抱えた。


「ど、どうしたでありますか!? 我なにかしたでありますか!?」

「やあ、近い近い」


 黒犬さんがずいずいと寄ってくるのでうさみは逃げ出した。

 さほど広くない部屋なので、すぐに壁に行き当たり、次は横にずれて行き隅の角に追い詰められてしまう。


「どうしたの貴女」

「わわわわわたしいいいい犬っだだダメっ」

「ガーン!? であります!」


 七割さんの問いかけに追い詰められたうさみが答えると、追い詰めていた黒犬さんがのけぞって倒れた。


 そしてのそのそと匍匐前進で移動を始める。


 見ていると最終的にうさみがいるのとは逆の隅で壁に向かって三角座りを始めた。

 うさみは胸をなでおろした。

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