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戦争初心者うさみ 25

「解除したよ」

「驚いた。貴女もエルフの子どもだったのね」

「や、こう見えて五百年以上生きてるんだけどね」

「本当に?」

「嘘かどうかわからないの?」


 うさみが変身を解除し、いつものちっちゃい金髪にして森色の瞳、ツルンペタンストーンエルフの女の子の姿が現れると、黒いお姉さんは本人が言っているとおり、普通に驚いた。


 なんかこう、裏の取引? みたいなときはポーカーフェイスでやり合うようなイメージがあったが、違うのだろうか。

 それとも、わざとそうやっているのか? であればなぜだろうか――。


 考え込みそうになって、うさみは思考を止めた。

 ここを掘り下げても利はないと思ったからだ。

 何か理由があってやっているとしても、うさみの経験では狙いを導き出せない。

 思いついても想像に過ぎないので当てにはならないだろう。

 だったらすっぱり考えない方がいいんじゃないかなと。


「まあ、いいわ。人質の子の話をしましょ」


 若干わざとらしい挑発だったが、話題をそらしたということは嘘かどうかわかる魔法は使っていないらしい。

 あれも万能じゃないからその方が正解かもしれない。


「紅の森の生き残りがいたとはね。それも、貴女のような子まで」

「……」


 わからない。

 うさみは首を傾げたいのをこらえていた。

 探りを入れているのか、情報を得られていないのか。


 うさみが普通のエルフではないことを知らない?

 いや、この言い回しだとどっちともとれるだろうか。


 もっとスパッと要求を言ってくればいいと思うのだが、言わないということはエルプリから話を聞けていないのだろうか。


 エルプリの身柄を抑えられている時点でうさみは絶対的不利だ。今更見殺しにするのはうさみにはできない。やったら後悔する。

 思い出すたびにいやな思いをするのだ。

 それはうさみにとって最も嫌なことだと言っても過言ではない。

 だって、死んでも繰り返すんだもの。

 残るのは記憶だけ。

 その記憶に後悔を刻むのは恐るべきことなのだ。


 だから情が移るようなことはできるだけしたくないのだけれど、今回はもう遅い。


 そして、エルプリは紅の森のエルフを見捨てることはできまい。

 出来るようならここまで来ていない。


 そういうわけなのでうさみはどこまで譲歩するかを考えている段階なのだ。

 だから、すでにまどろっこしい探り合いのような会話が面倒になってきていた。


「話を進めようよ。そちらの要求をどうぞ。天秤にかけて答えるよ」

「あら、せっかちね」


 向こうもうさみの立ち位置を見切れてないのかもしれないが、こうして焦って見せればエルプリが弱みであることを認識して話を進めてくれるだろう。

 そして、エルプリが弱みで、うさみに交渉の価値があると判断されれば、エルプリの安全性が高まる、はずだ。


「それはもう、だって心配だもの。拉致されただけでも怒っているけれど、傷の一つでもついてたら、覚悟してもらうからね」


 そういう方針で、エルプリの価値を高めるために、怒っていることを示しておく。


「覚悟? 何をするっていうの?」

「え、っと、そうだねえ。あなたたちの邪魔を全力でしようかな。まず最初に、あなたの姿で、公衆の面前で関係者に『認知してよおおおおおお!』って縋り付いてやる」

「ブッ!?」


 黒いお姉さんが吹き出した。ガングロだからわかりづらいが、顔を赤くしているように見える。

 意外と純情なのかもしれない。


「お姉さんみたいな立場の人が顔を知られるのは困るよね。今の格好が変装でも、関係者の人に社会的打撃を与えれば動きにくくなるよね。別に関係者の人じゃなくても、適当な偉い人とかにやってもいい。わたしの身一つでも、子ども一人の価値に見合わないだけの損害を与える手段はあるということを知っておいて。

 ということを踏まえて話を進めようよ」


 正直なところそんな恥ずかしい真似をする気はサラサラないが、これくらい言っておけばエルプリに傷をつけたりはしないだろう。


 と思っていたが、言い終わってから気が付いた。

 でも、もう傷つけられてたらどうしようか。

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