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戦争初心者うさみ 22

「浮草か」

「浮草め」

「浮草が」

「裏切り者め」



 なんかものすごい評判悪かった。






 二日間で四か所、百十一人の監禁場所を確認した。


 場所を確認して夜中に忍び込む。

 エルフなので夜自体は苦ではない。眠いは眠いけれど。

 暗くても見えるのはこういう時便利だ。


 それでも警備が敷かれており忍び込むのは一苦労だったが、一応接触に成功。


 しかしコミュニケーションに手間取った。



 捕らわれているエルフたちは、うさみが姿を見せると大変敵対的な態度をみせたのである。


 死にそうな顔をしていたのに、うさみが現れたら元気を取り戻して罵倒するのだ。



 もうこれ、ほっといていいんじゃないかなこんな言われてまで助ける必要あるのかしらん。


 とか真面目に思った。



 あと騒ぎになって見つかるところだった。



 魔法でごまかすのは大変だった。


 音をごまかす魔法と魔法を感知する魔法をごまかす魔法と魔力の動きを感知する魔法をごまかす魔法と。


 魔法を使えば使うほど感知されやすくなるのに、それをごまかす手段が魔法なのだ。


 繊細なバランスを取るのは大変なのである。うさみはどちらかといえば力押しの方が得意なのだ。




 ともあれ、どうにか話を聞いてもらって情報交換には成功した。


 話を聞けば、まあうさみに対する態度もわからなくもなかった。



 というのも、浮草のエルフにだまし討ちされたらしいのである。



 森に住まないエルフ、浮草の氏族。


 カ・マーゼによる紅の森侵攻の際に、彼らが参加していたのだという。


 主戦力ではなく、謀略要員として。




 紅の森のエルフは三百人程度、カ・マーゼ側は約千人。


 これは、数字だけ見れば森というエルフの土俵と人口即戦力という生活様式からすれば、十分に撃退できる戦力差だった。



 だが、様子見を兼ねた警告に出た精鋭が帰ってこなかったことで、紅の森のエルフは即座に救援要請を出した。


 それだけ精鋭を捕獲したか殺したかしたカ・マーゼ軍を脅威と見たわけである。



 つまり、最悪の場合に備えて若木であるエルプリを逃がしたのだ。


 その意味でも、捕まっているエルフたちからエルプリを連れ帰ったうさみが責められた。


 責められてばっかりである。



 救援要請は嘘ではないが目の前に敵がいる以上片道数十日の他のエルフが間に合うかどうかはわからない。間に合わない可能性のほうが高いかもしれない。


 なので赤樫の氏族、紅の森のエルフを絶やさないために外に出したという意味が強かったのだそうだ。



 そんなことうさみに言われても困る。


 そもそもうさみが居なければエルプリたちは全滅していたのだし。

 だがそんな“もし”を言い出しても意味がないことだ。

 実際にエルプリを連れてきたというのがすべてである。



 話を戻す。


 そうしてエルプリたちが旅立った後、本格的に交戦を開始したところにエルフがやってきたのだという。


 浮草の氏族ではあったが、同じエルフが攻められているのを見過ごせないと。


 紅の森のエルフたちは喜んで受け入れた。


 浮草にも見どころがあるものがいるものだと。





 これがスパイだった。





 結果、エルフたちは分断され人質を取られた。


 うさみから見ると態度はアレだが、身内に対しては仲間思いで純朴なエルフの多くはそれで無力化された。


 それでも反抗した者もいたが、これは武力鎮圧され、人質の一部と一緒に見せしめとして殺された。



 これをみて投降したエルフたちはさらに意気消沈し、抵抗をできないままに現在に至る。




 以上が紅の森に起きた出来事だ。エルフ側の視点のみだが。


 まあ確かに、そういう経緯があったなら浮草の氏族のエルフを敵視するのはわかる。

 それはそれとしてうさみとしては知らんがなと言いたいところだ。



 こうして初日に二か所、二日で計四か所、全部で敵意を向けられ話をして段取りを進めてきた。

 頑張ったと思う。




 代償としてうさみの意欲は大きく削られたが。


 時間の都合上、宿へ戻るのは深夜になり、帰還の挨拶も翌朝になった。

 その際にエルプリからのねぎらいと、仲間が済まないことをしたという謝罪、自身と仲間のために力を貸してくれることへの感謝を改めて告げられていなければ、「もう知らない!」と投げ出していたかもしれない。


 ある意味ではその方がよかったのかもしれないが。



 なぜなら。




 二日目深夜、二か所のエルフと接触を終え、帰ってきたうさみが見たのは、誰もいない部屋だったからだ。

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