戦争初心者うさみ 21
王都マーゼでは、戦勝パレードが連日行われていた。
うさみたちが潜入した時点で三日目、合計七日続ける予定らしい。
民はお祭り騒ぎで新王を歓迎していた。
「よくもまあこのような悪趣味なことを思いつくのじゃ」
「王様にとっては必要なことなんだろうけどね」
うさみとエルプリは宿の窓から街の様子を覗いていた。
資金はうさみのポケットマネーである。エルプリは無一文なので。
正確にはエルフ製装備を売ればお金を作ることは可能だが、足がつくと困るので控えているせいである。
うさみも余計なお金を多く持ち歩いているわけではないが、これも必要経費である。
さて、エルプリが悪趣味と評すのは、捕虜をさらし者にしていることだ。
この場合、捕虜は当然紅の森のエルフであり、わざとボロい、服とも言えない布と手かせ足かせ鉄球を身につけさせられて四面鉄格子の馬車に数人ずつに分けて入れられている。
エルフらしく顔はいいのだが、あからさまな囚人姿で表情も絶望感漂うもの。
これを見て、民衆は大喜び。
毎年のように敗戦している中で新王が即位したばかりとは思えないほど盛り上がっている。
というよりも、そういった悪い雰囲気をを払拭することが狙いでの催しだろう。
紅の森を攻めた理由のすべてではないだろうが。
新王にとっては、今後あるであろう隣国からの攻撃に対抗する戦略の一環、やっておいて損はない施策というところだろうか。
しかしそれも攻められた当事者の視点からすると話が違ってくる。
エルフたちは生贄にされたようなもの。
エルプリが怒るのももっともだ。
「まあおかげで居場所がわかるわけだし、都合がいい面もあるよ」
露出が多いということは、追跡もしやすいということ。
うさみは窓から離れて変身を解除する。
宿は、炎髪巨乳に変身したうさみと変装したエルプリで、親子を装ってとった。
こうしておくことで、うさみが子どもの格好で出かけると宿に残っているのは母親ということになる。
そうすると、主体は大人の炎髪巨乳のように見えるので、何かあったとき逃げる際に欺瞞情報をつかませることが出来る、という狙いである。
もっとも今回その目論見が役に立つことはなかったのだが。
「とりあえず、場所を突き止めて接触してくる」
「わらわはどうすればよいのじゃ?」
うさみはフード付きの外套を着こみながら少し考えて答えた。
「ここで窓から聞こえる話声とか聞いて情報集めてくれるかな。気になる情報があったらわたしが調べてくるから。入れ違うと困るし、子どもが二人に増えたら怪しまれるから外には出ないでね」
「わかったのじゃ」
うさみは、人間の文化に不慣れなエルプリを街に出すのは避けたかった。
しかし、出来ることないからなにもしないでここに居てね、というのも酷だ。
うさみはエルプリがやりたいことを手伝うという立場である。
本来がんばるべきはエルプリ本人であり、何もしないでじっとしていてはいけない、とかエルプリが思い立って街に出てしまうと、どう転んでもいい想像はできない。
大人びた言動をしているが実際は見た通りの子どもだ。
ただでさえ文化が違う場所で育ってきたのだ。
過保護かもしれないが、うさみが横にいない状態で人族と接触させるのは避けたかった。
なので部屋に居て出来ることを頼むという名目を用意することにしたのだ。
そして、わかったという言葉に、うさみは安心して出かけたのだった。