戦争初心者うさみ 20
王都マーゼは城塞都市であり、城門において検問が敷かれていた。
これはどちらかといえば一般的な習慣だ。
入門税を取るためである。
さらに魔法感知用の設備があり、不審人物を取り締まるために武装した兵士が出入りを監視している。
では空から、というのも難しい。
防空用の結界が設置してあった。
切り抜けるのは難しくないが、侵入がまるっとバレてしまうだろう。
警戒されれば活動が制限されてしまう。
うさみ一人で、今でなければ時間がかかっても構わないし最悪逃げるのでどうにでもなるところだが、今回はエルプリがいた。
エルプリを置いてうさみだけ潜入するという案は難しい。
捕まっているエルフへの対応が問題だ。
どういう状況にいるかわからないので、判断が必要だ。
うさみは今回の件を自身が主導するつもりはなくなっていた。
あくまで、エルプリに協力するかたちで動くことに決めていた。
そのことはエルプリにも伝えてある。
エルシスの件で腹を立てている自覚はあったが、やりすぎないためのリミッターとしてもその方がよいかと思ったのだ。
子どもに判断させるというのもちょっとよろしくない気はするが、必要な情報は集めるし助言はするつもりだ。
それに今となってはエルプリが紅の森の代表なのだから、そういう意味では妥当ともいえるだろう。
そしてざっと話し合った結果、基本的な方針は捕まったエルフたちの解放ということにはなった。
将来的に復讐とか移住とかの選択肢はあるが、それは大人のエルフたちとも相談して決めるべきだろうという、エルプリの意見によるものだ。
方針はともあれ、細かな判断はいくらでも発生するだろう。
情報を集めるたびに街を出入りして相談するというのは、行動の迅速性という点から見ても、また、手間の点でも、エルプリの身の安全の点でも、ナシである。
街の外は魔物が出るし。
また、うまくいった場合、エルフを連れて街を出ることになるが、その時エルプリを街の外に置いておいてそのせいで合流できなかったとかなると非常に困る。
なので潜入は二人で行うことにした。
しかし城門の警備からして、正面から入るのはまず無理だろう。
変身した姿では魔法がばれて止められる。
変身してなければ子ども二人でこれまた目立つ。
一人でも目立つのはうさみの経験からして確実なのだ。
二人となると倍率ドンである。
エルフとばれないための変装も常識の範囲内のことであり、調べられればバレる。
二人となるとさらに倍である。
エルプリと一緒だと、一人で逃げ出すというわけにもいかない。
しかたがないので、どこかに隙は無いかと街の周りを一回りしたところ、街壁に補修中の部分があった。
先の戦争で崩れらしく応急処置されていた場所を整備しなおしていたのだ。
ここを夜中に抜けることにした。
工事現場なので夜中も警備はあったのだが、城門と比べるとそれなりに過ぎなかったのだ。
結界も補修中の部分までは届かない。工事中に反応したら労役の人たちが死んでしまうので当然だ。
だから簡単に抜けることが出来たのだが。
あとから思えば、これが最初の失敗だったのだが、うさみはこの時はラッキーとしか思わなかった。