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戦争初心者うさみ 13

「弓下ろしたら? 疲れるでしょ」


 うさみたちは、樹牢があった場所の地面に座って話している。


 それを四方から弓をつがえたまま見張っているエルフが四人。

 主にうさみをにらみつけている。


「そうだな。放っても止められるだろう」


 あと、アルナイが一人。

 アルナイが身振りで示すと、四人は弓を下ろしたが、どこか落ち着かない様子だ。


 それを横目に、うさみはエルプリ、エルシスと情報交換中だった。


 偶然、エルプリを助けたこと。

 助けを求められ、エルフの居場所を探っていた際にエルシスを見つけ回収したこと。

 橙の森のエルフの集落へ辿り着いたら樹牢へ。

 その間エルプリのみ別にされ、事情を説明していた。

 樹牢の中で手が空いたのでエルシスの応急処置を進めたこと。

 その後合流して今に至る。



 この中で、特に伝えないといけないことがある。


「というわけで、しばらくついてないとエルシスさん死ぬ可能性が高いから」

「なんじゃと!?」

「……」


 エルプリが大げさなほどに驚きを露わにし、本人であるエルシスは逆に冷静だった。内心はわからないが。

 それは。


「足と合わせて、上位再生薬か、高位司祭の回復魔法か、同等のなにかが必要かな、治すのに」


 右膝から先がなくなっていたことに関係していたかもしれない。

 “試し”を座って観戦していたのも片足では立つのが厳しいからだった。


「そう、か。お主、うさみと言ったな。感謝する。命を救っていただいてありがとう」


 エルシスが胸に手を当てて頭を下げた。

 警戒心丸出しだった表情が、若干緩和されていた。

 命を握っていると言われれば気にはなるだろう。

 それでも、うさみが敵対的なスタンスではないということは伝わったと思う。糸外でやらかすことは別として。

 そのことを示すための礼でもあっただろう。


「エルフって、錬金術系の薬とか、上位回復系神聖魔法とかどうなの?」

「秘薬はあるが、失った四肢を取り戻す類のものではないな。そして神聖魔法よりは精霊様を崇めている。もちろん、祖神様を崇める氏族もいるが」

「先ほどは精霊様を引きずり出したので驚いたのじゃ」


 やはり神様と精霊は違うものだったか。

 実益があるこの世界の神様よりも優先してエルフたちが崇める精霊という存在。



 うさみは周りを見回した。

 囲んでいる四人のエルフがびくりと震えた。



 樹牢に入れるようにと指示が出ていたが、うさみたちは牢に入っていない。

 これは、うさみたちが抵抗したとか、そういう理由ではない。


 単に、樹牢が構成されなかっただけである。

 本来、橙の森のエルフの指示によって木が動いて牢を形成するはずだった。


 橙の森のエルフたちもこれには驚いており、やむを得ず四方を囲んで直接見張っているのである。


 “試し”の前に解放されたときは動いていた。

 それが今は動かない。


 となると、精霊がやっていたのではないだろうか。

 うさみが精霊の魔力を半減させたことで、弱体化してできなくなったと考えればつじつまが合う。


 自治上生活の利便性を提供してくれるのであれば、神様よりも優先して崇める理由になる……かもしれない。わかんないけど。


 もちろん全然関係ない可能性もあるが。


 ただ、うさみの推測が正しいとすると、うさみがやったのはインフラ破壊である。

 相手から手を出してきたのだから不可抗力を主張したいところだが、相手がどう受け取るかは別の問題だ。


 思ったより大事になったなと、うさみは思った。


 他人事である。

 正確には、起きたことは起きたこととして、相手はこれ以上うさみに関わらせたくないだろうから手が出せないだろう、と。だから他人事。


「精霊……様はどこの森にもいるの?」

「エルフの森にはいる場合もあるのじゃ。すべてではないのじゃ」

「それ以外の場所にもおわす場所がある。が、多くは人類が近づけるような場所ではないと伝わっているが」


 火の山だとか、氷の谷だとか、過酷な場所にいて、さらに神話級の竜の巣にもなっているそうだ。

 エルフの森の精霊にしても、聖域としてエルフたちもむやみに立ち入らないようにしているらしい。


 そこらにホイホイいるような存在ではないということだ。



 話がそれた。


「精霊様は怪我を癒したりは?」

「紅の森の精霊様なら、傷をふさぐことはできるのじゃ」


 じゃあ足は治せないか。


「枝が折れた場所から生えてはこないものだ」

「それは木によると思うんだけど……え」


 そもそも欠損を再生するという考えがないのか。

 うさみは驚いた。


 いやよく考えればそれが普通なんじゃ。魔法とかあるから感覚変わってたけれど。


 うさみはどう受け止めるか少し悩んだ。

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