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使い魔?うさみのご主人様 14

「かわいい使い魔愛好会、でどうかしら」

「そうね」

「無難ですがそれがよさそうです」

「よしなに」

「ではそれで」

「くー。すぴー」


 王立魔術学院校舎にある談話室に十余名の女子がお茶会を催していた。

 かわいい使い魔愛好会。

 今その名称が決まったこの集まりは、中等部の一教室で昨日生まれたばかりの集団だ。

 その名の通り、かわいい使い魔を愛でるための集いだ。ついでにお話などもするがそれはおまけに過ぎない。


 皆、かわいらしい使い魔を連れている。

 小動物や鳥が多いが、なかにはエルフや竜の幼体なども混ざっていた。


 この世界にすむ生物は、人間や亜人を除くと、ふんわりした雰囲気のもの、鋭利な雰囲気のもの、よくわからないものにざっくり分けられる。

 使い魔召喚は、呼び出す使い魔の方向性を組み込むことができるので、その際に狙ってこういった種の使い魔を呼び出したのが彼女らだ。


 使い魔は自身の分身であり、最も身近な他者となる。

 連れまわすなら自分の好みに合ったものがよいし、周りも使い魔を見て主である魔術士を判断するという部分もある。

 彼女たちは、そういった環境の中でかわいい使い魔を呼び出した、同士であった。


 すなわち、かわいいもの好き。


 みんな自分の使い魔が一番かわいいと思っている。

 だが、同時に、他のかわいい使い魔も愛でたい、そう考えるのは当然のことである。

 なんといってもかわいいもの好きの女子なのだから。


 しかし彼女たちは貴族である。

 魔術王国サモンサを守護し、統治する者たちである。

 初等部の子のようにただかわいいというだけでキャッキャして一緒に遊ぼうというわけにはいかない。


 人が集まれば派閥が生まれる。

 各々の利害があり、恩があり、奉公があり、思惑がある。

 それらを無視して個人の嗜好のみを優先するわけにはいかない。

 対立していたり、敵対していたり、そんな間柄のものもいる。

 中等部ともなるとそういった自覚を持ち始めるのだ。


 なので、あ、あの使い魔かわいい! と思っても、容易に撫でたりできないのである。


 それがなぜ、こうして集まるようになったか。

 それは、新しく使い魔として召喚された小エルフが原因であった。

 

「この子撫でていいですか!」


 子どもらしい素直な言動だ。

 主は教室でも浮いていた落ちこぼれ令嬢。

 実家が貴族社会で孤立気味なせいで本人も周りに溶け込めていなかった。

 召喚したてで使い魔の扱いに慣れてないのか、使い魔の意思疎通ではなく自らの手で使い魔の非常識な行動を止めた。

 そして、主に頭をはたかれたエルフの挙動はかわいらしいものだった。


 大げさで、感情的で、底抜けに明るい道化師のようなエルフの行動。

 それは大人になりつつあった少女たちに、童心を思い出させるには十分だった。


 ウサギを撫でる小エルフ。

 撫でられて気持ちよさそうにしているウサギ。

 かわいいものだ。


 わたわたしているエルフの主。

 なぜか気持ちよさそうなウサギの主。

 この二人までかわいらしく思えた。

 

 使い魔にくけりゃ魔術士も憎い。

 逆もまた然り。


 彼女たちは、かわいいもの好き。


 あのウサギはわたしも狙っていたのだ。もちろんうちの子が一番だけど。

 わたしはあなたの猫が気になります。もちろんうちの子が一番だけど。

 蛇もかわいいよ。もちろんうちの子が一番だけど。


 心の垣根は簡単に取り払われた。

 かわいいことの前に貴賎なし。

 ただ愛でるべし。


 こうして生まれたのが、かわいい使い魔愛好会。

 派閥も身分も関係なく、ただかわいい使い魔を連れていて、かわいい使い魔を愛でたいもののための集い。

 

 名前決めは難航した。

 なんでもなく、ただ、かわいいものを愛でるために集まっているのだと示すため。

 心ゆくまでかわいい使い魔を愛でるには、余計な色がついてはいけないのだ。

 かわいい使い魔を愛でるための集いなので、かわいくて気の利いた名前を付けようとしたが、どうしても余計な何かを暗示させてしまう。

 例えば花の名前を使うと花系の名の家を想起されてしまう。

 立場とかそういった不純物は不要。


 そうして皆で悩みぬいた結果。

 それが、かわいい使い魔愛好会。

 味も素っ気もないそのまま名前であるが、決まってみればこれしかないと、全会一致で可決されたのだった。


 あ、嘘だ、一人寝てた。

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