おっぱい初心者うさみ 4
「よく考えたら、冒険者とか軍隊に売り込めばよかったんじゃ……激しい運動する人たちで、お金もそこそこあるはずだし……」
ということに思い至ったのは、ある地域の魔法使いギルドと布ギルド、服飾ギルドが同盟を組んで攻撃してきたのをカネと魔法で制圧した後のことだった。
なぜそんな大事になったのかというと
まず地属性魔法使いの価値の低下。
次に綿布の量産による布の価値の低下。
連鎖的に、服の価値の低下。
この結果である。
野生の魔法使いが一般の人に魔法を教え広めているということが、魔法使いギルドにとっては既得権益の侵害につながる。
彼らは魔法知識と技術を独占しつつも進歩させてきた実績と矜持があった。
地域によって体制は違うが、うさみたちが活動している地域では徒弟制と資格制を合わせた制度が成立している。
魔導師と呼ばれる師の資格を持つもの以外は魔法を伝授することを禁ずるというものだ。
そのため、魔法を伝授する方法そのものを独占している。
また自力でそこにたどり着いたものはスカウトして取り込むか、あるいは……排除することもある。
それは利権のためでもあるし、魔法使いの質を保つためでもあった。
魔法使いの質が落ちると魔物との戦いで大きく不利になるというのが魔法使いギルドの主張である。
そしてそれらをガン無視して地属性魔法を広めたのがうさみたちである。
続いて布ギルド、服飾ギルドについて。
新しい綿布という布が出現し、供給されるようになった。
はじめは高価だったものが徐々に価格は低下していくと同時に供給量が増えていく。
物価とは、それを生産するのに必要な費用によって決まる、だけではない。
供給が増えることで価格が安くなる。
なぜなら、支払う側が持っているお金には限りがあるからだ。
そして高いものと安いものがあればより安いものを買う。
また、売れずに在庫がたまってしまった場合、安売りしてでも処分しようとする。
物で持っていても次の商売につながらないからだ。売り払って別の売れるものを仕入れなければならない。
なので生産側、購買者側の双方の都合に商人の都合を合わせて価格が決まるのだ。
これを生産調整などでうまく回していたのが布ギルドなどの同業者組合である。
影響範囲に必要な商品の量を把握し、職人の数と生産量を調整する。
同時に技術を保持し品質を維持する。
それによって、職人がご飯を食べられるように、製品が安かろう悪かろうにならないようにする。
これが生産に関わるギルドの役割だ。
ただお金のためだけに利権を守っているわけではない。利権を守ることで職人の生活と技術を守っているのである。
そしてここにうさみたちが綿布をぶち込んだのである。
そりゃあ揉める。
なぜなら、うさみたちの目的は布の価格破壊。
一年に一着だった服を月一で買えるようにしてさらにブラを普及させようというのである。
こうなったら戦争である。
ということで、敵を同じくしていた魔法使いギルドと手を組んだのだ。
魔法使いギルドは初手から実力行使に出た。
おかしな話ではない。
うさみたちはブラを広めるために、綿布を広めるために、地属性魔法を広めるために取引希望者を募集しており、特に情報を隠していなかったため、その拠点、正体はバレていた。
頭を暗殺すれば組織だろうが集団だろうが動きは止まる。
幸いと言おうか、魔法使いギルドは地域有数の武闘集団である。魔物との闘いの第一線を維持する一員であり社会的地位も高い。
そういう人材もいるし、最悪偉い人を動かしてごにょごにょすればいいという判断。
襲撃を受けたうさみは無傷で取り押さえた。
うさみが魔法使いの天敵であることは、本人を除いて誰も知らなかった。
うさみを狙う魔法は発動しない。なぜなら魔法が発現する間に妨害するからだ。
世界最強の生物を相手に数えきれないほど死にながら習得した、命の危険を知る超知覚と魔法技術の先にあるもの。
ゲーム時代の経験から、この世界で死なないために適応発展させた魔力制御の絶技。
魔法の行使から発動までの間に干渉する。
属性とか相性とかそういう問題ではない。
魔力制御力でうさみを越えなければ、うさみの知覚範囲内で魔法を使うことは不可能なのだ。
神に与えられたスキルに頼っている者ではうさみの域にたどり着くことはできない。
うさみはこの技術に名を付けていないから。
だからうさみは魔法戦において世界最強である。
うさみを暗殺するのであれば、魔法使いではならなかった。
魔法使いでなければ成功するかといえばまた+別の問題だが、完全なゼロよりはマシな確率じゃないかなあたぶん。
ゆえに、暗殺のために攻撃を仕掛けてきた魔法使いを逆に無力化するのは造作もないことだった。
しかし、同時多発的に狙われた協力者の地属性魔法使いが一人殺されてしまったのである。
翌日、魔法使いギルドは拠点を失った。
同時に、この世界に新たな魔王が誕生した。
同時に、うさみは気が付いたのである。
「よく考えたら、冒険者とか軍隊に売り込めばよかったんじゃ……激しい運動する人たちで、お金もそこそこあるはずだし……」