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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
204/494

冒険者初心者とうさみ 66

 それから。

 アップルが知る限り、うさみさんがドイ・ナカノ街冒険者ギルドへ帰ることはなかった。


 ドイ・ナカノ街はかつての繁栄を取り戻すことはできていないが、新たな産業が生まれたことで以前とは違った発展を始めた。


 新たな産業とは迷宮事業だ。

 魔物が溢れないように管理できれば、獣系魔物という資源の発生源となる。

 火に耐性がありほんのり暖かいという特性を持つ赤焔獣の革や魔物の中でも魔法的な能力を持つ者が体内に持っている魔石、それに食料としての肉など。

 こういったドイ・ナカノ領近辺では入手できなかった素材を餌に冒険者を集め、同時にドイ・ナカノ領に一定の貢献をした者のみに開放することで利益を確保した。

 迷宮に挑戦したい冒険者に領内の魔物討伐をさせることで氾濫で拡散した魔物は徐々に減りつつある。


 事業の大半は冒険者ギルドへ委託されたが、監査、防衛、間引き、平時の鍛錬などの目的で騎士団も駐在することとなった。

 冒険者ギルドは一度失敗しているのでその見張り兼保険というわけだ。



 一方アップルたちは、あまり新事業に関与していなかった。


 見習いの育成は一応の成功を見た。

 戦闘技術が未熟なため、主戦力にはなれないが、ド素人より死ににくいので荷運びとしての仕事にありつけたのだ。

 冒険者ギルドは“花と実”をはじめとしたいくつかのパーティにさらなる育成と、周辺地理を教えることを依頼したため、アップルたちはこれを受諾。


 そして育てられた見習いは、外から誘致したパーティの道案内兼荷運びを行うギルドの委託職員として組織されることになった。


 アップルたちは一通り見習い冒険者を育て終わると、難民を育てることにした。

 その第一歩として、アップルの同郷の者たちへと声をかけた。


 目的は、村の復興だ。

 もともと、街の外には魔物がうろついていた。

 間引きをし、強敵が出れば冒険者が派遣されていたが、弱い魔物は村で処理していたのだ。

 しかし現在は、迷宮産のより強い魔物が徘徊している。

 だから村を放棄して難民としてドイ・ナカノ街で暮らしているのだ。


 ならば、村人を鍛えればどうだろうか。

 元のように村で生活できるようにならないか。

 そうでなくても、難民として炊き出しの食糧を消費するだけの立場を脱することが出来るかもしれない。


 そういう狙いである。

 アップルは故郷を復興させたかった。

 故郷だから。

 そこで、仲間に提案したのだ。


 それに対してケラサスが出した条件は、定住できる場所の提供だった。

 ペルシカはケラサスがいいなら何でもいいそうだ。



 こうして村人育成計画が始まった。

 同郷の人たちに話を持っていき、希望者を募った。

 倒した魔物の素材を換金して武装も整え、生活費も自力で稼げるようになった。

 なかにはそのまま冒険者になってしまった者もいた。

 しかし多くはやはり故郷への帰還を望んだ。


 そのうち、他の村の生き残りも参加するようになり、統制が難しくなってくる。

 しかし、ケラサスとペルシカの助けを得て、アップルはこれを乗り切った。

 最終的に農村帰還計画として組織化し、ドイ・ナカノ伯の傘下となった。

 アップルは責任者にさせられそうだったところを、またケラサスの助けで回避した。



 アップルの故郷を含め、いくつかの村を復興した。

 人口が減った分は、農村帰還計画に協力した冒険者などが村の護衛を兼ねて入植することになった。

 アップルたちはこの枠をつかってアップルの故郷に家を持つことになった。


 以前と違うのは定期的に騎士団が見回りに回るようになったことだ。

 民が武力を持ったので警戒しているのですわ、とはペルシカの解説だ。

 アップルは反乱の時に見た騎士団の働きなら警戒するまでもないんじゃないかなあと思ったが、そうともいかないらしい。


 このころになってナノも合流した。

 村の復興が落ち着く頃にはナノの手が必要なことほどの怪我人が出ることも減ってきたのだ。

 さらに他所から誘致されてきた慈愛神の神官が居ついたので、お役御免になったらしい。


 そして日々治癒魔法を使い続けた結果、毎日金貨をもらえるようになったので神殿を尋ねたのだが……一言で言えば、神殿の司祭様と折り合いが悪くなったのであった。

 冒険者ギルドが費用を出して治療していたのに対し、神殿の金銭神の司祭様は別途奉納金を必要としたことでいろいろあったらしい。

 詳しく聞こうとすると、知らない方がいいなのですと真顔で言われたのでアップルは聞かないことにしていた。

 うさみさんと同じ金色の聖印を下げていることが分かれば十分だと思った。


 そして、アップルとナノで一軒、ケラサスとペルシカで一軒を確保。

 一年の半分を農作業につかう。

 ペルシカやアップルの地属性魔法が農業に利用でき、新たな畑も開拓できた。

 もう半分でドイ・ナカノ街に出かけたり、冒険者活動を行ったり、村人に戦い方や冒険者の心得を教える仕事をする、といった生活を送るようになった。

 留守中の畑の世話はお金だったり月謝替わりだったりで村人に任せるのだ。


 最近の悩みはアップルとナノの婚活である。

 あとの二人はもうくっついた。

 アップルは村を離れたくないしナノは金銭神の司祭として村に礼拝堂を作って孤児院を開くという目標があり、協力してくれる人という条件があった。

 たまに農村帰還計画で知り合った騎士の人とかがやってくるのだが、条件に合わずに帰っていく。


「別に結婚しなきゃいけないってことはないんだけど」

「ケラサスとペルシカは幸せそうなのです」


 間近でいちゃつかれるとちょっと気になってしまうのだった。




 ともあれ、以上が冒険者初心者が成長し、冒険者となり、安住の地を得ることになった顛末である。


 おしまい。






 □■ □■ □■






 それはそれとしてうさみは千歳で死んだ。星界だった。

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