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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
201/494

冒険者初心者とうさみ 63

「まず、この街はさびれるであろうし、冒険者ギルドは厳しい立場になるであろうな」


 ケラサスってばグレイプが亡くなってちょっと顔つきが凛々しくなったなあ。


 アップルは話を聞きながらそんなことを思った。


 さて、この先どうなるのかという話である。


 ドイ・ナカノ街は街道を維持することで発展した土地である。

 現在、その街道は魔物の氾濫によって寸断され、物理的にも破壊されて、またまだまだ多くの魔物が残っている。

 これを狩り元の水準まで戻さなければならないが、それは時間がかかればかかるほど街道を利用する者が離れていく。

 複数ある経路のうち最も安全だったから発展していたのである。

 安全でなくなれば廃れるのは当然だ。


 さらに、壊滅した村、そして難民だ。

 今期の収穫は期待できない。

 他の貴族領と比べて財政の農作物への依存度は低いが、あくまで比較であり、またそれは街道が機能している前提のことである。

 また、アップルの家族のように村から救出された、あるいは自力で避難してきた者たちが難民としてドイ・ナカノ街に滞在している……多くはほとんど野宿に近い状態で。

 アップルの家族や故郷の友人も含まれる彼らが村に戻れなければ、領内の農業生産は回復しない。

 それどころか仕事もなくただいるだけなので生かすだけでも苦労する。治安も悪化する。なら追い散らすか放置するかとなると、ますます治安の悪化に拍車がかかることは目に見えている。


「それって、もう絶望的ってこと?」

「そこはドイ・ナカノ伯の器量次第であろう。街道の再整備、難民を村に戻すためにも冒険者や騎士を動かさねばならぬ。そのためにはカネが必要だ。防衛にも多額の出費があったであろうが……立て直すのは不可能ではない、が、至難だな。それに――」


 冒険者ギルドの過失問題がある。

 迷宮の隠蔽から氾濫を起こした冒険者は冒険者ギルドに所属していた。

 となると、ドイ・ナカノ街冒険者ギルドには管理責任が問われることになるだろう。

 その権限を持つのは領主であるドイ・ナカノ伯爵である。

 多大な損害を出した組織には相応の罰を与えなければならない。

 しかし、現状をどうにかするには冒険者の力は不可欠だ。


「落としどころは、冒険者ギルドを矢面に立てて働かせることだろうが、あまり無理をさせては冒険者が去っていくであろう。逆に人手を増やしたいにもかかわらずな。となると」

「稼ぎ時?」

「ともとれる。狩った魔物の素材を輸出して対価を作ることになるであろう。幸い、赤焔獣などはこの辺りではこの機を逃せば手に入らぬ。足元を見られてもそこまで酷いことにはなるまい」


 耐火性がある特殊な素材を取れる赤焔獣をはじめ、この地方では珍しい魔物がばらまかれている。

 狩りと同時に素材の回収を行うとなると、人手がさらに必要にはなるが、冒険者、そして野心がある商人にはいいエサになるだろう。


「群れに対応できればだけどね」


 獣系の魔物は群れる種類がいる。

 赤焔獣もそうだし、この一か月で戦ったなかにはほかにもそういう魔物がいた。

 一体では勝てる相手でも群れになると話が変わってくる。

 今のアップルたちだと、油断できないと言ったところだ。

 一か月、死線を抜けて、今まで以上に成長したが、魔法的な攻撃手段を持っている相手だと簡単にはいかない。

 アップルたちも、一緒に行動した冒険者が居なければ、そしてグレイプの犠牲がなければ、全滅していただろう。


 つまり一か月前のアップルたちより弱いパーティだと戦力として不足であるということ。

 荷物の運搬を請け負ったり、複数パーティで集まって活動する方法はある。おそらくそれでも利益は出るだろう。

 利益は出るだろうが、死人も出るだろう。


「高段冒険者であれば難なく対応できようが……すごかったなあ」

「だね」


 緒戦で大暴れしていた高段の冒険者たち。

 魔法なしで魔法より派手で威力の高い攻撃をしているのを目撃した。

 斬撃を飛ばしたり、地面をひっくり返したりとやりたい放題だった。

 あれだけできればそりゃ魔法は必須ではないだろう。

 最前線から脱落してきたという噂だった三人組もいたが、彼らも目を見張るものだった。


 それでも掃討しきれない物量が氾濫だったのだが。


 高段の冒険者なら群れでも簡単に排除するだろうが、それだけの報酬も必要になる。

 数多く招くと、ただでさえ問題が多く出費が激しいのにさらに財政を負担することになるだろう。

 周辺の危険度が上がっているので低級の見習いや駆け出しが今までできていた仕事もできなくなっているのではないだろうか。


 アップルは考えているうちに訳が分からなくなった。

 こういうのは偉い人が考えることだ。

 そう思いなおし、ため息をついた。


「前途多難だね」

「伯爵の手腕に期待しよう」

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