使い魔?うさみのご主人様 13
一日の講義を終えた。
疲れた体はだるいし、講義中も眠気が襲ってきた。
特に歴史の講義などは眠くてたまらなかったが、下敷きがなくとも都度、表面上は理解できるので数少ない得意分野(メルエール比)であるのでなんとかがんばった。
ただ、気づいたら皮紙に謎の図形が描かれていていたのが文字通り謎だったが。
お昼には、いつの間にかかわいい使い魔愛好会と名前がついたお茶会に誘われた。
仮眠を取りたかったので断ろうとしたのだが、うさみの陰謀で参加することになる。
陰謀といっても率先して小動物の群れに乗り込んでいっただけであるが。
かわいい使い魔愛好会にはなぜか上級貴族の子女も参加しており、放置していくのははばかられたのだ。
結果、うっかり居眠りをして気づくと使い魔に囲まれていた。
みんな使い魔の手入れをしてきたのか、触り心地が昨日より良かったせいだ。
顔を真っ赤にして失礼を謝罪したが、あらあらうふふと返された。みんなから。意味が分からない。
うさみはウサギを頭にのせていた。意味が分からない。
実技では特筆するべきことはなかった。
訓練の成果は見当たらなかったということだ。
朝からへろへろになったというのに。
うさみを問い詰めたらまだ一日目じゃんなにいってんのと真顔で言われた。
そういうことがあって、リリマリィとのお勉強会の時間である。
なぜか、会場が寮の談話室になった。
部屋の中でうさみとリリマリィの使い魔がどったんばったんと大騒ぎしたせいだろうか。
やっぱり迷惑だったかな。
とメルエールは思っていたのだが。
「ご」
「き」
「げ」
「ん」
「ようよう」
「ご、ごきげんよう」
談話室には同じ寮に住む、かわいい使い魔愛好会の構成員が集まっていたのだ。
「皆様、快く協力してくださってありがとうございます」
と、リリマリィ。
メルエール困惑。
うさみ使い魔に合流しようとして小型犬と対峙。
聞けば、お昼のお茶会の時点で根回しが済んでいたらしい。メルエールは居眠りしていたが。
リリマリィ曰く、自身の使い魔とうさみが騒ぐのは構わないが、うさみがかわいそうだと。
しかし、一度引き受けたからには今更やめるとは言いたくない。
では人数を増やせばよいのではないか。そうすれば使い魔二体がひゃんひーひゃんきゃーとならず、適当に棲み分けするだろうと。
そして愛好会の皆さんの声をかけたのだという。
天使か。
人の使い魔のことまで考えるなんてなかなかできることじゃない。
メルエールは感涙した。
やはり胸の大きい人は心も広いのか。
リリマリィの手を取ってありがとうございますと何度もお礼を言った。
愛好会の皆さんにも。
「いいのよー」
「わたくしたちも、復習したり苦手を教え合ったりできますから」
「他にも勉強会やってる人たち居ますからね。大体は派閥関係で集まってますけれど」
「よしなに」
皆さんいい人すぎてメルエールは胸がいっぱいになった。
一方うさみは猫の陰に隠れてウサギを頭にのせて梟と犬が談話室の備品の盤上遊戯で遊んでいるのを観戦していた。
その後メルエールはさらに感謝することになった。
愛好会の皆が、過去に作った覚書を持ち寄ってくれていたからだ。
皮紙はそれなりの値段がするので、必要なくなったら削って再利用するのが通常である。
なので、過去の覚書は残っていないものも多い。
逆に言えば、残っているものは重要な部分だったり、まとめ直して資料としたものであったり、処分するのを忘れたりしたものである。
最後のものはともかく、一から勉強するにあたって非常に参考になるのだ。
しかも、覚書を作った者が教えてくれるので考えがわかりやすい。
諸説ある部分などはまわりからツッコミが入ったりもする。
お茶やお菓子も用意されて。
和気あいあいとした勉強会となった。
最終的に、覚書を貸し出してくれるということになり、メルエールの感謝はもうどうにもとまらない。
今後も勉強会は継続して開催されることも決まった。
お茶当番やお菓子当番などを決めたりするのも楽しかった。
メルエールは貴族になってこれほど楽しい思いをしたのは初めてであった。
一方うさみはお菓子で餌付けされたのち羊をまくらにしてすやすやしていた。
なぜか体の上に小動物が集っていた。
たまにうーんうーんと苦しそうなねごとらしきうめき声が聞こえた。