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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
196/494

冒険者初心者とうさみ 58

「引き抜きだと?」

「はい、ケラサス様。もちろんお断りいたしましたが」


 ある日、ペルシカが引き抜きの話をされたという。


 冒険者にとって魔法使いが希少で有用であることは周知のことである。

 そして高位のパーティほどその有用性が生きる。


 魔法使いは単純な火力として扱うだけでも強力だが、他の役割の者、戦士や斥候と連携することでより高い効果を発揮する。

 これは、“花と実”の中でも実証済みだ。

 魔法の高い効果の弱点は魔力消費。

 必要十分なだけに抑えることで消費も抑えられ、前衛や遊撃の能力次第で戦果は拡大する。


 両者は相乗的に効果を発揮するので同じ魔法使いならより腕のいいパーティと組む方が有益だし、逆もまた然り。

 その上で、一方の能力が高すぎたり低すぎたりすると組む甲斐がなくなる。


 何度も言うように腕のいい魔法使いの冒険者は多くない。

 アップルやケラサスのようにちょっと魔法が使えるだけのものはいないでもない。

 しかし、ペルシカのようにちゃんと教育を受けた本物の魔法使いは少ないし、アップルの先生のような魔導師となればさらに少ない。

 ナノは神聖魔法使い、神官なので、同じように希少でもまたすこし違うのだが。


 そしてペルシカはアップルやナノとも協力できる社交性も持っていることが証明されつつり、有力なパーティに目を付けられているのだ。


 自分たちの方がペルシカの能力を生かせる。こちらに移籍しないか、と勧誘されるわけである。



「ケラサス様がいない場所になど行く意味がありませんわ」


 というわけで断ったのだが。

 ペルシカにしてみれば、ケラサスに対しての想いも態度も隠していないのに、そんなこともわからず話を持ってくる時点でそのパーティはハズレである。

 それならアップルやナノと組んでいた方がいくらかマシ。


「であれば、次は我に話が来るか……いや、どうであろうな」


 ペルシカが欲しい。

 しかし、ペルシカはケラサスと一緒でなければ動かないという。

 であれば、ケラサスと一緒でも欲しいと思うかどうかになる。

 そしてそれでもほしいとなれば、ケラサスに話が回ってくるだろう。



 しかし、結局ケラサスに話が回ってくることはなかった。






 □■ □■ □■






「ううむ……」


 ケラサスはちょっと落ち込んでいた。

 ペルシカを勧誘できるというのは大きな利点であるのに、自分が一緒となるとまるで話がこない。

 ということは。


 ケラサスの評価が低いということになる。


 戦士は冒険者の中で一番多いだろう。

 武器を持てばそれで戦士を名乗れる。

 もちろんその質はピンからキリまでいることだろう。


 ケラサスははじめグレイプのおまけとしてパーティに参加した。

 それなりに力を示してきたと思っていたのだが。

 今はペルシカのおまけにもなれない、と言われている、そう感じてしまう。



「どうしたの?」

「なのです?」


 珍しくペルシカがいないので気が緩んでしまい、一人ため息をついていたところ、アップルとナノに見られてしまった。


 ペルシカはケラサスを求めてくれる存在であり、同時に運命共同体だ。身分を捨ててまで自分を追ってきた彼女である。あちらが望まない限り、ケラサスも見捨てることはないだろう。


 一方アップルとナノは仲間にして好敵手である。

 前衛としての実力は総合して同じくらい。

 アップルとナノが魔法を補強しようとしているのに対し、ケラサスは剣技を磨いている。


 これはケラサスがグレイプの訓練を受ける際、よくペルシカが二人と一緒に居るのを見た結果であるのだが。

 ケラサスが一緒に居るとペルシカはケラサスを意識しすぎるきらいがある。

 自分がいないところでペルシカと二人が交流することはパーティとしては望ましいことであるし、友人ができればペルシカのためにもなるだろうという気遣いでもある。


 話を戻すが、結果的に分業している形であるのだ。

 それなのに、実力は同じくらい。


 アップルの打撃力と、迎撃の機の読み方は称賛に値するし、ナノも手堅い動きで槍の射程をうまく使った牽制をこなし、時折目を見張る鋭い踏み込みを見せることもある。


 自分はというと、二人と比べて長く学んでいる分技術は上だが、生まれの関係でどちらかというと対人用だ。

 冒険者にとってより重要な対魔物向けの訓をした期間と実戦経験は、おそらく二人と大きく変わらない。

 この事実は二人に嫉妬する部分でもあり、自身を奮起させる材料でもあった。



 そういう相手に弱いところを見られてしまった。

 ケラサスは少々バツが悪かったが、しかし一応尋ねておくべきと考えた。

 引き抜きとなればパーティ全体の問題だ。


「実はだな――」

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