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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
191/494

冒険者初心者とうさみ 53

「魔法ってすげー」

「すげーなのです」

「腕を上げたな」

「うふふ。もちろんですとも。ケラサス様のお役に立てるよう研鑽は怠っておりませんわ!」



 反省会である。

 とりあえず一度試してみようということで、三人でまず間違いない仕事を受けて四人での戦闘を行った。

 その結果わかったのが「魔法ってすげー」であった。


 中型魔物を一撃で屠るという威力は真実で、魔法を準備する時間さえ稼げれば活躍の舞台は余りあるだろう。

 実際有力な魔法使いは偉い人に重用されているし、名の知れた冒険者パーティ、特に町や国をまたいで知られているようなパーティには魔法使いがいることが多い。

 運用を間違えなければ強力な戦力なのは歴史と偉い人が証明してくれている。


 ただ問題もある。


「毛皮とか取れそうにないけどね」

「消し炭なのです」

「風魔法? でやったやつもズタボロだったし。討伐証明にはなりそうだけど」


 規模が大きな攻撃魔法だと魔物が受けるダメージが深刻になり、倒し方によっては素材を取れそうな相手でも取れなくなるという懸念も正しかった。

 魔法によっては討伐しましたと証明するために持って帰る必要がある部位が燃え尽きたり、ぐちゃあして形が残らなかったりする。

 これは困る。単純に収入が減る。

 もちろん死ぬよりはいいが。


「あとやっぱり巻き込まれそうで怖いね」

「慣れと信頼が必要であろうな。それに必要があればもろとも吹き飛ばすのが魔法使いというものだ」

「なにそれこわい」

「なのです」

「むむむ」


 全滅するくらいならもろとも吹き飛ばすというのは絶対に負けられない相手であれば有効な手として数えてもいいだろう。

 しかし、冒険者である。

 勝てそうにないなら一時撤退もするし利益は最大化したい。

 味方もろともなんてのは最後のそのまた最後の手段にしてもらいたい。と、巻き込まれ最有力候補のアップルは思う。

 もっとも、前線で肩を並べるのがペルシカがご執心のケラサスなので、ひどく離れたりしなければ多分巻き込まれはしないのではないかなあとも。


「水はあれでしたけど、土の手はよかったなのです」

「あれね。あたしもできるようになりたいわ」


 大規模な攻撃魔法以外にも魔法を試した。


 まず、水でおぼれさせるとかできないかという提案があったので試してみた。

 はじめ水の弾を打ち出す魔法を使っていたのだが、量が少ないとあまり効果がなく、殴るか石でも投げたほうが方が強くねという結果になったので工夫はできないかと意見を出し合った結果の案だ。


 しかしこれは、操作の難易度が高く失敗。

 成功すれば呼吸する魔物はなんでも倒せそうな発想だったが。「撃ち出すだけと比べると宙に浮かせた上顔面に張り付け続けるのは十倍以上難しい」と本人の弁。


 上手く行ったのは地面を変形させて手を形作り、足や全身をつかんだりぶん殴ったりする魔法だ。

 上位に石で同じことをやる魔法もあるのだが、石より土の方が扱いやすいことと、現物がある場所が多いことから土の方が使い勝手がよさそうだった。


 アップルが使う魔法の正式版かつ上位版とでも言ったらいいだろうか。

 足元をこちらの味方につけるのは有効だ。

 隙ができれば他のみんなで攻撃して倒せる。

 あるいは、前衛が抑え切れない数の相手が出た時に時間を稼ぐことが出来る。

 アップルだと一日に数回しか使えないが、ペルシカなら手の大きさにもよるが十回以上使え、大規模攻撃魔法と比べると消耗も少ないため、継戦能力も維持できる。


 ただ、乱戦になるとペルシカでは追随が難しい。難しくてもやりようはあるが、無駄撃ちになる可能性がある。

 押したり引いたりでうまく利用できればいいが、下手に維持して狙うよりはだめなら即切り捨てて、次の状況に合った魔法を使う方が有効な場合が多いし。


 なお、アップルも殴り合いながら魔法を使うことは非現実的なので同じく乱戦だと使えない。

 乱戦でアップルが前に出ない選択肢もまずないだろう。初手のみと考えるならアップルの魔法の出番は遠のきそうである。



 類似の効果の魔法に足元を泥濘にしたり、蜘蛛糸のように粘着する地面にしたりする魔法もあるが、前衛が踏み込めなくなる欠点がある。

 とはいえ土の手を操る魔法も操作にいくらか意識を取られるので、どちらも使いどころ次第だろう。


 このあたりの魔法の利点は他にもある。

 前衛の仕事があることだ。

 魔法でドーンより加減しやすい前衛の攻撃なら必要な部分を残して倒すことも比較的容易だ。

 先に述べた継戦性能の高さと合わせ、余裕をもって戦い、利益を出していこうという方針とかみ合うのだ。


「広範囲攻撃魔法を使わないと勝てない状況には追い込まれたくないなのです。最悪一人、いえ、回復に手を使うとして二人欠けても最低限戦えないとそのうち死ぬのが目に見えてるなのです」

「価値観が違いますわ……!」


 しかしもっともですわ。とペルシカが額に手を置いてため息をついた。

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