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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
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冒険者初心者とうさみ 52

「いや、この間のは条件が良かっただけだからね?」


 赤焔獣の頭を潰して一撃で倒した件だが、アップルが言うには同じくらいの大きさの魔物と比べたら頭が柔らかかったし結構な勢いで突っ込んできてた相手の力が上乗せされたから結果的に一撃だっただけであると。

 ナノからするといつかの甲羅鳥のときから変わっていないアップルの特技だと思う。自分より大きな魔物が突っ込んでくるのを正面から立ち向かうのがまず頭おかしいというか毎度ひやひやするのだけれど誰かわかってくれないかなのです。


「そ、そうですわよね」


 見ると、ペルシカが胸をなでおろしていた。

 自分が売り込もうとしていたものが既にあると言われては価値が下がると思ったのだろうか。

 少なくともナノやケラサスにはまだできないので十分な価値だと思うのだけれども。本当なら。


「さて続けますなのです。特技は爆裂火球とありますが、これはどういったものなのです?」

「はい。爆裂火球は一定範囲に火と衝撃による攻撃をする魔法です。十分な殺傷力がある直径は手を広げた大人約三人分。威力は先ほども述べた通り中型魔物を屠る程度、大型にも通用いたします。範囲が広い分有効と言ってもいいですわ」

「準備にはどれくらいかかるなのです?」

「十秒ほどですわ」

「なるほどなのです。ちょっと待つなのです」


 ナノはアップルとケラサスに手招きして集め、ひそひそと小声で話をする。

 しばらく意見を交換してから元の体勢に戻る。


「いくつか質問なのです。まず、魔法の範囲に巻き込まれることが危惧されますがそのあたりどうお考えなのです?」

「はい。そのことについては三つの対策がありますわ」

「三つ。なのです?」

「はい。まず一つは連携。前衛と術者が効果範囲を把握し、魔法発動の機を共有することで適切に退避する、あるいはより効果的に敵を範囲内に誘導することが出来ますわ」

「なるほど、武器を使った連携と同じなのです」


 最前面を受け持つアップルやグレイプの後ろからナノが攻撃する際、アップルが避けたりナノがアップルの陰から移動して攻撃したり。あるいはアップルがひきつけて横から槍を突き入れる。そういうことはやっている。

 範囲がより大きい魔法でも同じことはできるだろう。が、失敗した時に中型魔物を屠る火力を受けると思うと怖い部分は残る。だってそんなの死ぬなのです。


「二つ目。事前に使用する魔法に対抗する防御魔法をかけておく。あるいはそういった効果のある魔導具を装備しておく。これにより巻き込まれても被害はなしあるいは軽微になるでしょう」

「予算は決して多くないし魔力にも限りがあるという点を除けば応用しがいのある案なのです」


 完全に防御できるのであれば素晴らしいことだ。先にもあった敵の誘導がよりしやすいし、一つ目の対策に失敗した時の保険となるのもよい。

 ところで魔導具って、とても高価であるというのは常識なのだけれど。まあひとまず置いておこう。


「三つ目。魔法を使う際敵味方識別効果を付与すること。欠点として準備時間や魔力消費が増大することと、事前に味方に魔法的なしるしを付けておく必要があるため、特定状況では使えないことがあげられますわ」

「へー、便利なのです」


 魔法については知らないことが多いと、ナノは改めて思う。こういう知識を広めてくれればみんなもっと安全に生き残れるのではないだろうか。魔法が使えない人には意味がないので魔法と一緒に。


「もうひとつ。我々の活動範囲は森や草原が多いなのです。大規模な火による攻撃で火事が発生する、あるいは取得目標の薬草などが損なわれることもありえますが、どう思うなのです?」


 ナノの質問に、ペルシカはあっやべっという顔をした。

 いや、ペルシカなのでもっとお上品な感じだろうか。あっ盲点でしたわ、みたいな。


「えー、はい。爆裂火球は最も得意というだけで、他の属性でも同等か多少落ちる程度の火力を出すことは可能ですわ。より範囲を狭めた単体目標用のものももちろん扱えますので柔軟かつ臨機応変に対応していきたいと考えておりますわ」

「具体的には? なのです」

「火のほかに水、地、風の魔法も修めておりますし、基本の魔弾や盾などの無属性の魔法も使えますので、延焼の心配なく魔物を倒すことは十分に可能ですわ」

「なるほどなのです。ちょっと待つなのです」


 ナノは再びアップルとケラサスに手招きして集め、ひそひそと小声で話をする。

 ペルシカはわずかに不安そうな表情を表に出したが、すぐに元の自信ありげな笑みに戻った。


「なるほど、偉い人たちはより強い魔物を相手取るので討伐が優先されるということなのです?」

「はい。冒険者の流儀には、慣れていけるよう努力する所存ですわ」


 ケラサスが言うには、統治側が動くような魔物は危険であるし早急かつ確実な排除を求められるため、戦術もそのように特化されるのだという。火の魔法が好まれるのも、同じ魔力でより殺傷力が高くやけどや延焼という副次効果が相手を追い詰める一助になるからだそうだ。

 今の今までペルシカはそのように認識していたのだろう。

 気付いてすぐに対案を考え努力すると言い切ったペルシカは確かに柔軟だ。ケラサスがいるからこそだろうが。

 実際にどうするかはパーティ全体で考えるべきことだろう。


「下手に加減して死んだりしたら元も子もないので、おいおいでいいと思うなのです」

「初見の相手とかには十分以上で当たりたいよね」


 この時点でナノとアップルの判断はほぼ固まっていた。


「では次に体力について――」









 面接の結果は仮採用となった。

 いくつか気になる点は見受けられるも、実際に試してみなければわからない部分もある。

 ケラサスとの関係についてが最大の懸念点だが、まあ最悪ケラサスごとさよならもありうるだろう。

 とりあえずケラサスとの約束の一年を目途にしようということになった。


 想像するにケラサス含め、雲の上の人だろう。

 しかし身分をかさに着て高圧的に何かを命じてくるということもなく、努力すると歩み寄りの姿勢を見せた。

 ケラサスが言い含めたのか本人の性質なのかわからないが、ここまで譲歩されると断るほうが怖い。

 とにかく試してみようと、そういうことになったのである。



 なお後日判明したことだが、自身が認めた相手以外はすべて平等に無価値だと認識しているらしい。

 孤児でも農民でも冒険者でも貴族様でも平等に無価値だと。

 なるほど怖い。

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