冒険者初心者とうさみ 50
朝食を食べていたら。
ペルシカが一人でやってきて。
何かが始まりそうだと思ったら。
動かなくなって何も始まらなかった。
そしてケラサスが後を追うようにやってきたのだった。
「というわけで、今後ともよろしくお願いいたします」
「え、どういうわけ? 何がよろしく?」
「なのです?」
ケラサスがやってきたのに気が付いたペルシカは、支えていたナノから身を放し背筋を伸ばして胸を張った……が、足がプルプルしていたので結局ナノが席に誘導した。
そして四人、アップルとナノ、ケラサスとペルシカに分かれて向かい合うように改めて席につく。
と、唐突にペルシカが頭を下げたのだ。
アップルとナノは意味が分からない。
「実はな。このペルシカ、我の旧知の」
「婚約者です」
「その」
「婚約者です」
「グレイプの孫にあたる者だ。家は別なのだがな」
「ケラサス様の」
「グレイプの娘が嫁入りした家で生まれた娘なのだ」
「婚約者です」
「ペルシカお前ちょっと静かにしてくれる?」
「わかりましたわケラサス様」
かぶせるように言葉を挟んでくるペルシカを、ケラサスが黙らせる。
「主張強いですね」
「なのです」
まあ、昨日した想像がおおむね正しかったことはよくわかった。
ケラサスは直接的な言葉を出さなかったが、否定もしなかったのでそういうことなのだろう。
「でだな、“花と実”に加入したいと言っているのだ」
「あー、なのです」
「そうなったかー」
ケラサスが言うと、ペルシカが口を閉ざしたままこくりと大きく頷く。
アップルたちからすれば昨日の状況から想像できる範疇だ。
ケラサスを探していた関係者だということは確定していたわけである。
連れ戻そうとするかもと思っていたので、不利益は少ない……かどうかはまあペルシカ次第ではあるが。
「グレイプの時のケラサスと同じように考えたらいいかしら」
「いや、我はあえて何も言わぬゆえ、直接話をして決めてもらいたい。自力で二人を説得できなければパーティを組んでも上手くいくまい」
「ああ、そういう話?」
ケラサスはそもそもグレイプのおまけとして加入した経緯がある。
今では共に過ごした時間相応に認めているが、当時はどこの誰ともわからない、偉そうな年下の男の子。
なにもなくじゃあいいよーと加入を認めるのは危機感が足りないだろう。
今回はその時と似ている構図なので同じ、かと思ったらそうではないと。
自力でやれとは。自分の時はお金で解決したくせに。
「したくせにってお前ら」
「違った?」
「そういう解釈もあるか」
ケラサスがため息をつくと、ペルシカがものすごい形相でアップルをにらみつけた。
「え、何?」
アップルが尋ねるが、ペルシカは何も言わない。
ただ睨むだけ。あ、歯も剥いた。こわい。
「ああ、ペルシカ。もう喋っていいぞ」
「ちょっとあなたケラサス様に馴れ馴れしいですわよ」
「ペルシカ。そんな様子では加入できぬぞ」
「はい」
ケラサスとペルシカが仲がいいのはよくわかった。
ペルシカがケラサスの指示を聞くことも。
しかし、いちいちこうして睨まれていたら困るだろう。能力とか以前に問題だ。
「ではちょっとお話をしましょうなのです」
「はい、神官様」
「あっれ? 態度が違う……」
アップルは首を傾げた。