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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
171/494

冒険者初心者とうさみ 33

「おめでとー」

「ありがとうございますなのです」

「ありがとうさみさん」


 アップルとナノが所属するパーティがドイ・ナカノ街冒険者ギルドに正規冒険者パーティとして登録された翌朝。

 二人はうさみさんに呼ばれて祝福の言葉をもらっていた。


 当日はパーティの仲間と祝杯をあげていたので遠慮したのか、うさみさんとは話していなかった。

 正規登録を終えてもいつもの基礎練習のために早起きし、一通り体を動かして、いつもなら神官の勉強と魔法の自主練習で別れるという時に声をかけられたのだ。


「新しい子も登録できたんだってね」

「はいなのです。抜け道っぽいけどなのです」


 ドイ・ナカノ街冒険者ギルドの規則上、見習いをコツコツやってスタンプをためないと正規冒険者の試験を受けることができない。

 スタンプを短期間でためる方法はある。

 講義を受けてその場で必要な能力を満たしていることを示せばいい。

 この手を使えば一週間かけずに受験資格を得ることができる。


 が、今回この手は使わなかった。


 ケラサスは試験を受けていないのである。


 アップルたちは三人パーティで受験し、合格、登録後ケラサスをパーティに加入させたのである。これが抜け道。


 既存のパーティに追加加入する分には冒険者ギルドは口を出さない。

 試験に合格した正規冒険者であれば、自己責任の範疇になるのだ。

 もちろん、パーティとして登録されている以上、解散や離脱があれば資格を失うことになり、その時に受験していない者は改めて評価試験を受ける必要がある。


 しかし今回の場合は直ちに影響はなかったというわけだ。



「正規になっちゃったから、今後は宿代と食事代とられるようになったからね。ちゃんと計算に入れてる?」

「はいなのです。お金の出入りはちゃんと把握しているなのです」


 見習い冒険者に対する様々な支援が失われることになる。

 これからは全部アップルたちが自分で考えなければならない。


 仕事をするか休むか。

 仕事をするなら何をするか。

 報酬の分け方はどうするか。

 ナノの借金どうするのか。


 お金の出入りについてはナノが担当することになった。

 なんといっても金銭神の神官である。

 収入の半分をパーティ予算として管理し、残りを均等に分配。

 解散や離脱があればパーティ予算を頭割りで分配。

 宿は雑魚寝部屋から鍵をかけることができる二人部屋に移動し、荷物を置けるようにもなった。

 増えた出費は働くことで賄えるという見込みである。


「そうすると、神官の修行の時間を考えたほうがいいかな」

「あ、そうなのです……」


 失念していた、という顔でナノがうさみさんを見る。


 正規冒険者の方が見習いよりも動き出す時間が早い。

 朝張り出される仕事を受注しなければならないのだ。例外を除くと早い者勝ちなのでみんな早起きして張り出し担当の職員を出待ちする。

 今まではこの時間の半分を修行に、もう半分を依頼票の読み上げの小銭稼ぎに費やして、そのあと食事をとってから集合、くらいのスケジュールだった。


「考えてはいたなのです。できれば夜にあててほしいなのです。どうですかなのです」

「んー。夜はねえ、時間がバラバラになるからねえ。でも朝から魔力使い切ったりするのもマズいよねえ」


 うさみさんは夕食を見習いにおごることが多い。三日に二回くらいは違う見習いと卓を囲んでいる。

 本人はお金を使わなければならないからと言っている。

 ナノが聞いたところでは、金銭神様からもらったお金は使わないといけないのだと。どうせ神聖魔法を使う際にも使えないし、毎日座っているばかりで使い道も多くないのでどんどん使うのだと。

 そして外見子どもがお金持ってるのを見て脅し取ろうとしたり奪い取ろうとしたりする者がいたらギルドに伝えるらしい。こわい。


「じゃあ夕飯食べた後にしよっか。朝もっと早起きしてもいいけれど」

「夕飯後でお願いなのです」

「はーい。じゃあ不都合があったらまた」

「はいなのです」


 頷き合う師弟。

 その様子をアップルが見るともなしに見ているところに。


「おい、アップル、ナノ、出てきたぞ」


 と、ケラサスの声が。いつの間にかグレイプとともに来ていたらしい。

 何が出てきたかというと、張り出し担当の職員である。まあマっちゃんなのだが。


「よーし、じゃあ行ってくるわ。昨日決めた通りでいいのよね」

「うむ、薬草採取だ」


 そしてアップルが先輩方の群れに混じっていく。

 混雑するので一つのパーティにつき一人までということにされているので、他の三人は待機。



 こうして、アップルの正規冒険者生活が始まった。

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