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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
168/494

冒険者初心者とうさみ 30

「へえ、三段冒険者」

「すごいなのです。うちの上位に入るなのです」


 アップルとナノが初の討伐仕事から帰ってくると、見慣れない三人組のベテランらしき冒険者がいた。

 マっちゃんに尋ねたところ、他所から移動してきた冒険者で、審査の結果ドイ・ナカノ街冒険者ギルドでも有数のパーティであると格付けがなされたのだと答えが返ってきた。


 三段というのは三個目の段ということで数字が大きいほど高位である。

 この前段階で級というのがあり、見習いはスタンプが集まれば段位の試験を受けることができるが、不合格の場合、級で技能や知識の大体の習得度合いを評価される。

 つまり段を持っていれば、ドイ・ナカノの正規冒険者であるということだ。


 話を戻すが、この基準で現在ドイ・ナカノ街を拠点としているパーティの一位はギルドマスターの六段で、実稼働しているトップパーティが五段。

 しかし、最も多く頼りにされているのが二段であり、その上の三段というのはナノの言うようにドイ・ナカノ街の冒険者ギルドでは上位に入る。


 そういった状況なので三段というのは見習いにとっても尊敬に値する相手なのだ。


 その尊敬に値する相手は、アップルたちを避けるようにギルドを出て行ったが。


 どうもナノを見ていた気がした。胸のあたりに視線が向いていた気がする。

 ナノの胸は最近大きくなっているようだが、特筆するほどのものではないので、首から胸に下がっている金銭神の聖印を気にしていたのかもしれない。


 まあ、かもしれないの話なので置いといて。


 反省会も含めて終了し、いつものようにアップルとナノは食事をとりながら話をすることにする。

 その卓に、いつもと違う面子が、一緒に席についていた。


「髭爺。今日はありがとう」

「なのです」

「はい」


 髭爺。

 本名はグレイプ。

 アップルの同期というか、同日に見習いに登録した人で、初仕事もご一緒した。

 前職の関係で戦闘訓練を積んでおり実戦も経験していたらしく、見習いどころか二段の冒険者よりも強い。

 装備も実戦に耐えうるものを所持しており、なんでこの人見習いなのと首を傾げたくなるお爺ちゃんである。

 そう、お爺ちゃんである。


 アップルとナノはパーティメンバーを探す上で見習いの中から候補を絞っていた。

 髭爺グレイプもその候補の一人である。

 選出理由はやはり強さ。

 アップルをしのいで見習い中最強と言える実力だ。

 戦闘者としてパーティに入れば即戦力になる。


 しかし、欠点もある。

 まず、男性であること。

 アップルとナノは女の子。異性とパーティを組むこと自体が欠点になりうる。

 男女関係で崩壊するパーティは意外とよくあるらしい。マっちゃん情報。

 危険を共有し生死を共にする仲間であるのでそういう関係になりやすいのだそうだ。

 とはいえ、年齢差を考えればそこまで大きな問題にはらないだろう。多分。

 アップルとナノはグレイプからすれば孫でもおかしくない。

 それでもイケるという男性はいるだろうが、女性側にも選ぶ権利はある。

 グレイプは少なくとも現在見える範囲では紳士だった。

 なのでとりあえずセーフ。


 次に、年齢差。

 前の問題を緩和する要素が別の問題そのものである。

 お爺ちゃんあと何年続けられるの問題。

 アップルとナノは十代半ばで、生き延びれば十年以上活動できるだろう。

 グレイプはあと十年生きられるだろうか。

 生きるとしても何年動けるだろうか。

 ドイ・ナカノ街の冒険者ギルドの規定上、パーティ単位での登録なので、グレイプおじいちゃんが途中で抜けると補充する必要があるのだ。

 そうでなくても怪我や病気や死亡で脱落するメンバーが出ることはあるのだから別にいいじゃんという考えもあるが、既に見えている問題であるとなればやはり話は別である。


 年齢からくる問題は他にもある。

 体力の低下。

 特に持久力が徐々に低下してきているらしい。本人の深刻なので間違いない。

 これも年を重ねることで悪化はすれどよくはなるまい。


 また、腰にくる仕事は厳しいらしい。

 しゃがんで草むしりを何時間も続けるなどといった仕事はつらく、むしろ立っている方が楽なのだとか。


 それ以外は、少なくとも今はまだ至って健康だというが、それもいつ症状が出始めるかはわからない。



 まとめると、即戦力だが将来性に問題がある。



 とはいえだ。

 活動を開始するにあたって即戦力というのは極めて魅力的である。

 むしろアップルとナノが装備の不足で戦力としての要件を満たせていないのが心苦しいほどである。

 ただし、実戦を重ねて稼げば装備を整えることはできると試算済み。


 年齢による脱落可能性も実働開始の遅れまで考えれば、先送りしていい問題だ。


 ということでパーティ結成に誘うことにしたのである。

 欲を言えばあと一人か二人増やしたいところだが……。



「話は分かり申した」


 アップルとナノの話を聞いて、グレイプが頷く。


「前向きに検討したいところじゃが、一つ条件、いや、一人誘いたい者がおってな。その方と一緒であれば」

「なるほど」

「なのです」


 こうして、アップルとナノは一歩パーティ結成へと進むことになった。

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