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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
166/494

冒険者初心者とうさみ 28

「ここが例の冒険者ギルドか!」

「新人甘やかしてるってやつな!」

「そうそれ」


 ドカドカと足音を立てながら冒険者ギルドへ踏み入ってきたのは、三人組の男性だった。

 歳は二十後半から三十くらいに見える。いずれも人族。

 それぞれ大剣、大斧、大盾を背負い、革を金属で補強した鎧を身に着けている。

 それらは年季が入っている割に状態が良い。金属部品に錆もない。よく手入れされているのだ。

 大物を背負っているのに動きにぶれがない。

 装備がなじんでいる証拠である。


「いらっしゃいませ。ドイ・ナカノ街冒険者ギルドへようこそ」


 他の街の冒険者であるとあたりを付けたマっちゃんが対応に動く。

 ベテランである。

 冒険者として十年生きられるものは少ない。

 逆に言えば十年生き延びた者は猛者である可能性が高い。

 嫌でも経験を積むことになるのだ。

 魔物を倒せば強くなるこの世界で時間による蓄積は力である。

 十年、致命的なミスをせず生き残れる慎重さ、或いは運、もしくは実力。どれであっても相応の実力になるのだ。


「よお、職員さん。俺らぁドヘン・キョウの街から来たパーティ“山崩し”ってんだがよ。ここじゃあ新人を甘やかして、上位冒険者から搾取してるってのは本当かい?」

「事実なら黙っちゃいられねえなあ」

「そうそれ」


 むくつけき大男たちが妙齢の女性を囲んでにらみつける。

 しかし女性、マっちゃんも冒険者ギルドの受付である。荒くれ物の扱いは専門だ。


「まあ、ドヘン・キョウから! 魔境の最前線からよくぞいらしていただけました!

 いえいえ、新人を手厚く育成するのはスポンサーの伯爵様の意向でして、そのための予算をいただいているのです。立派な冒険者の皆さんの取り分から回しているわけではありませんからご安心ください! 場所柄最前線の冒険者にふさわしい高難度お仕事が多くは出ませんので、それでどなたか勘違いされたのではないでしょうか?」


 やや体を前に傾け、腕で巨乳を挟むようにして強調し、上目遣いでにっこり。


「そ、そうかい。それならいいんだ」

「いいよいいよ」

「そうそれ」


 一撃で男たちの鼻の下が伸びた。


「山崩し様、本日はどういったご用件でしょうか? どうぞ、あちらでお話をお伺いしますわ」

「おう」

「うへへ」

「そうそれ」


 そして建物の奥、カウンターへと案内していく。


 他の街の冒険者ギルドと、ドイ・ナカノ街の冒険者ギルドは別の組織である。

 しかし、冒険者の行動範囲は広い。

 ある街から隣の街までの護衛という仕事は高い頻度で存在するし、特定の物の探索をするために遠くまで足を延ばすこともある。

 そのため、複数の冒険者ギルドに登録している冒険者は多いのだ。

 それも護衛や遠くまで行く必要がある依頼を達成できる、信頼できる冒険者にこそ多い。


 前金を持ち逃げしたりせず、また達成して帰還できる実力がある冒険者。

 当然重宝され、ギルド側も便宜を図る。


 そして、近隣の冒険者ギルド同士で提携するようになる。

 その方が有力な冒険者にとって便利で、ギルド側も情報を交換出来て都合がいい。

 互いの冒険者が移動するときは移動先のギルド宛の紹介状を発行することで、使える冒険者であると証明するのである。


 逆に言えば紹介状を持っていない他ギルドの冒険者は、どこか問題がある可能性が高い。



「そうですか、紹介状を紛失なさったと。でしたら、登録にあたって当ギルドの基準で審査をさせていただくことになりますが、よろしいでしょうか?」

「審査ぁ?」

「これでも俺たちゃ、ドヘン・キョウで銀位のパーティだったんだぜ、ほら」

「そうそれ」


 そう言って、カードを見せ、マっちゃんに詰め寄る三人。

 カードは銀色で、『このカードの持ち主は銀位冒険者である』という内容の一文と、発行者であるドヘン・キョウ冒険者ギルドの刻印がある。


「まあ、ドヘン・キョウの銀位といえば超一流の冒険者じゃないですか!」


 大げさに驚くマっちゃん。

 ギルドによって評価のしかたは違うが、ドヘン・キョウの銀位というのは、危険地帯の魔境で単独で活動可能と認められた冒険者の証だ。

 パーティでの活動と単独での活動は話が違う。

 危険度を考えれば可能であっても避けるべきではあるが、それが可能であると認められたということは、ドイ・ナカノ街の冒険者を基準にしてみるとトップクラスの実力に相当するだろう。


「でしたらなおさら、審査を受けていただきたいですわ! 当ギルドで審査を受けていただけますと結果によってさまざまに特典がありますので是非に!」


 例のポーズ。

 しかし、男たちは一瞬ニヤけただけですぐに気を取り直した。視線はマっちゃんの強調された胸をチラチラ見ているのでにらみつけるのも迫力がない。


「俺たちに実力があるのは証明されてるんだ、その特典とやらをはじめっからつけてくれりゃあいいじゃないかよ」

「それともこの“山崩し”を疑うってのかあ?」

「そうそれ」


 コワモテ三人を相手ににこやかに立ち回るマっちゃん。

 しかし、三人組もおとなしく引き下がる様子はなかった。

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