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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
164/494

冒険者初心者とうさみ 26

 冒険者は城壁の外で活動する職業である。

 と、いうのは迂遠だ。


 冒険者というのは戦いを前提とする職業である。


 壁の外は危険がいっぱいだ。

 中でも魔物と呼ばれる生き物が特に危険である。

 魔物は他者の命を狩る生き物だ。

 生態として群れたり共生したりする者もいるが、そいつらも自分たち以外を排除しようと活動する。


 というのが一般の見解である。

 簡単に言いなおすと人を襲うのだ。


 そういった危険を排除するのが冒険者の役割の一つである。

 定期的に、あるいは恒常的に駆除し続ければ、一定の安全は保たれる。

 村や農地、街道などは、壁がなくてもそうやって守られている。


 しかしそれは完ぺきではない。

 先日の虎狼のようにいないはずの魔物が出現することがある。

 きれいに掃除したはずの場所でも他所から流れて来ることもあるし、見逃されていることもある。

 なので魔物を見かけたら最寄りの戦力で対処し、手に負えなければ街の冒険者ギルドに仕事が回ってくる。


 場合によっては騎士団が出張るが、定期的な掃討以外ではあまり動かないと言われている。



 話を戻そう。


 冒険者にとって戦いは業務の一部である。

 逆に言うと、戦いの可能性がほぼない雑用仕事は本来冒険者の仕事ではない。

 だからこそ雑用仕事を行うものは見習いと呼ばれる。見習いだから雑用仕事を行うのだともいえるが。


 だが見習いから正規冒険者になるにあたって戦いを経験しないかというとそんなことはない。

 虎狼の時はさておいても、甲羅鳥の時のように不意の遭遇はありうる。

 ……というだけではなく。


 戦闘を前提とした見習い用の仕事も存在するということだ。

 戦闘訓練である程度の戦力を持っていると認められなければ参加できず、また、常時行える仕事ではないので頻度は高くないのだが。



 冒険者にとっては弱いが一般人にとっては危険な魔物というものはそれなりに存在する。

 専門家と素人の差は相応に大きいのだ。


 冒険者は弱い魔物を狩ることをあまり好まない。

 強い魔物を狩った方が報酬もいいし、より魔物を殺せば強くなるということは知られているので、その点でも自分たちが倒せるギリギリを攻めるほうが効率がいい。

 あまり狙いすぎたり目算をしくじると死ぬけれども。


 安全マージンを鑑みても、いわゆる“美味しくない”魔物というのはどうしてもでてくる。

 しかし、冒険者が嫌がるからと放置したとして、その魔物の被害がなくなるわけではない。当たり前である。

 近所に魔物が住み着いて駆除依頼を出した者にとっては困ったことになる。



 そこでどうするかというと、報酬を増やすのである。

 しかし、報酬を増やすと言ってどこから予算を持ってくるのか。

 初心者育成用の補助金からである。


 見習い向けの仕事にすれば、伯爵から出ている予算を使えるし、見習いの経験にもなるし、引率の冒険者にとっては相場より高い報酬とギルドへの貢献実績をつめる。


 危険度が低く、元の報酬が低く、見習いでも対応できる可能性があり、引率の冒険者が足手まといを連れていても勝てる、そんな手ごろな魔物が出たら、発生するのだ。






「武器貸してもらえるんだって」

「壊したら弁償のうえ賃貸料もとられるなのです」

「世知辛いね」


 アップルとナノは討伐を翌日に控えていた。

 二か月も続けばいい加減雑用仕事も飽きてきたところである。

 しかし、もう一人か二人、パーティを組めそうな相手を見つけたいということで、正規冒険者への昇格を止めていた。


 候補は存在する。

 ただ、それぞれ癖がある人材で、保留中なのであった。

 アップルとナノも癖があるのでかみ合わせが悪いとよろしくないのだ。しかたない。


 とはいえいつまでも保留を続け、見習いでいるわけにもいかない。

 たくさん稼いでたくさん使えが金銭神様の教義である、というのは置いといても、借金もあれば仕送りもしたい。

 装備を購入維持するお金も必要だ。


 そんなときに、保護者付きの討伐仕事が降ってわいたのである。

 参加して、パーティメンバー選抜の参考にしつつ経験をつもうということになったのだった。


「まあ、毎度毎度イレギュラーに会うとは限らないけど、一応気を付けなよ。神聖魔法で呼び出せるのはナノだけだし、ナノも借金増えるからね」

「お師匠様、そういうのは思っても口に出さないでほしいなのです。口に出すと本当になるなのです」


 うさみさんがぞんざいに注意を促し、ナノが苦情を言う。

 それを見てアップルは、ナノは大丈夫かなと心配していた。

 杞憂で終わればいいと思いながら。

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