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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
162/494

冒険者初心者とうさみ 24

 ナノが死地から生還して一週間が経過した。


 その間に、ナノが変わった点がいくつか判明した。


 まずひとつは、ナノの身体能力が大きく成長していたことだ。

 たった一日で何がそんなに変わるものかと、経験がないものは思うだろうが、強敵と対峙することで大きく力を伸ばすのは稀に見られることである。

 なぜ稀なのかというと、強敵を相手にしたら普通は死ぬからだ。


 ナノの体力と、足の速さ、そして危険に対する感知能力が大きく伸びており、体力面ではアップルに比肩しうるほどになっていた。

 虎狼と遭遇してから逃げ続け、生き延びた経験によるものだということは想像に難くない。


 また、危険感知能力は戦闘訓練の模擬戦で大いに役に立った。

 攻撃を仕掛ける機と、狙われている場所を感じ取れるようになったのだ。

 その精度は危険度の高さに比例した。

 つまり、強い相手、高威力の攻撃を使う者に対してより強く働く。


 とはいえ、感じ取れたとしても、それを生かす能力がなければ無用の長物となる。


 そしてふたつめ。

 ナノは以前にも増して訓練に力を入れ始めた。


 その姿は鬼気迫ると表現して過言ではないほどだ。

 朝起きて雑用仕事を終えるまでのスケジュールは変わらなかったが、戦闘訓練の受講頻度が上がり、寝る前まで自主訓練に励むようになった。

 どうせ寝るからなのですと限界まで自信を追い込む日々が続いた。


 これを見たアップルが置いて行かれまいと追随する。


 アップルの認識ではナノは自身より先を行っていた。お試し加入の前の時点でだ。

 そして帰ってきて強化されさらに訓練に熱を入れ始めた。

 このままでは置いていかれてしまう。


 二人は争うように鍛え始めた。



 そして一週間でぶっ倒れた。



「あーあーもー。一発で全回復する魔法はいる? 金貨一枚だけど」

「そんなにお金」

「持ってないなのです」


 処置室の寝台に寝かされた二人に、うさみさんが呆れた声をかけた。


「寝込むようなことがあったら生活破綻するから気を付けるように言わなかったっけ? どうだったっけ? あれ、言ってないかも? でも自分で認識してたよね?」


 収入と支出を計算していたのは事実で、このままでは未来がないどころか直近で動けなくなったらそれで終わりになりかねない。

 ということは二人は認識していた。

 ナノが重傷を負う前までは。


「ついなのです」

「勢いで」


 ナノは怖かったのだ。

 自分が弱いということが。

 強くならないとまた恐ろしい目にあうと確信したのだ。それが全面的客観的に正しいかはともかく。

 あとは追われるように訓練に打ち込んだ。


 アップルは少し違うが似たようなものだ。

 力では勝っていると思っていた。

 田舎出身に多い腕力信奉者のケがあるアップルは、無意識に周りの見習いを下に見ていた。

 しかし、冒険者ギルドに来て、力の強さばかりが役に立つわけではないことを認識させられた。

 雑用仕事は体力勝負が多いので力が不要ということは絶対にないが、それが全てということもなかった。

 むしろ草の抜き方など様々なコツが役に立つこともあり、また読み書きや計算、そのほか様々な知識や技術を学ぶことも楽しく、役に立つことを知った。


 そんな中、かつて下に見ていたナノに総合力で抜かれたと自覚することがあり。

 そのナノが死にかけたのを目の当たりにして。

 さらには力でも追いつかれつつあると知った。


 自身が依って立つものが思ったより不安定で、しかも立っている場所もそれほど高くない。

 更には下にいたはずのものが上に進んでいく。


 焦った。



 結局この日は、うさみさんの手で強制的に休まされた。


「一日の生活費っていうか、満足に食べようと思うと銀貨一枚くらいじゃない? いっぱい運動したらもっと食べないとつらいよね。それに宿代もかかるわけ。

 休んだ日も、食費と宿代はかかる。というより、君ら休んだ方がお金かかるよね。

 無理して倒れたりしたらどうなるか、もう一回よく考えよう」


 うさみさんがお説教の後に“一日銀貨一枚の歌”を歌い始めた。

 歌詞はものすごい内容がないもので、日数と銀貨の枚数を数えるだけのものだ。

 たまに「そういえば借金もあったよね」とセリフが入って金貨を十五枚分数えてからまた銀貨を数え直すという。


「ぐああああ」

「いやあああなのですう」


 アップルとナノは再認識させられた。

 お金って怖い。

 夢に出たし。

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