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使い魔?うさみのご主人様 9

「はう……」

「あう……」


 メルエールがベッドに倒れこむと、うさみもその横に倒れこんだ。


 リリマリィとの勉強会は大変捗った。

 どれくらい捗ったかというと、これもうゼロからやり直したほうがいいですね、という結論が出るほどの進捗だ。


 今日の講義の復習からはじまり、メルエールがダメダメだということが発覚し、どこがわからないのかという問いにはっきりと答えられず、もはや何がわからないのかわからないという状況だということがはっきりした。

 ほんわかリリマリィもあらまあと一度は唖然としていたが、なぜか異様にやる気を出して、夕食を挟んで徹底的に尋問された。


 尋問である。

 何がわからないのかわかるまでとことん問い詰められた。

 講義内容を少しずつさかのぼりながら、これはわかる? わかりませんを繰り返す作業。

 リリマリィのほんわか笑顔をみると動悸がするようになるくらい問い詰められた。

 リリマリィがなんであんなノリノリだったのかわからない。

 最終的に準備しておくので明日またいらしてくださいと帰された。


 その間ずっとうさみは犬とにらみ合っていた。


 なので二人ともお疲れなのだった。


「メルちゃん様明かりつけてー」

「主人を顎で使おうとはなんて使い魔……」


 夜は暗いので基本的にはみんな寝るわけだが、時間が惜しいと思うものは明かりをつける。

 明かりといえば火であるが、しかし油は高い。安い奴だと臭い。ロウソクはもっと高い。

 なので学生は自前の魔術で明かりをとる。

 もちろん魔力を使うので、昼間に節約しておかないといけないし、魔術の腕が悪いと光量が低かったり点滅したりする。


 メルエールはもちろん、光量が低いし明滅する。ロウソクが揺らめくような感じになる。書き物などするには向かない明かりだ。


「いやまあ、わたしは真っ暗でも見えるんだけど」


 エルフなので。エルフは夜でも真っ暗でも見えるのだ。


「それじゃあなんで明かりをつけさせたのよ」


 わざわざ立ち上がって魔術を使ったというのに。

 魔術がへたくそであると再認識させられるだけじゃないか。

 メルエールはぷんすこ怒りたかったが、疲れていたのでその気力が出てこなかった。ひっぱたく気も起きない。

 もうねたい。


「いやちょっと提案っていうか話をしようと思って」


 ベッドでゴロゴロしながらうさみが言う。

 なんであんたあたしのベッドでくつろいでてあたしが立って話聞いてるのよ。

 メルエールはイラっと来たのでベッドに倒れこんだ。


「ぎゃん」


 うさみが下敷きになって変な声を出した。

 ちょっと気分がすっとする。


「話って?」


「え、割と痛かったんですけどそれについて何のコメントもないの?」


 こめ?

 いいから早く。疲れてるのよ。

 メルエールはうさみの上からのいてベッドの上に座る。

 うさみも座って向かい合う。


「あのね、お勉強はお友達に見てもらえるようになったじゃない?」

「そうね」


 ひどく疲れたけれどね、と視線にこめてメルエールは答えた。

 いや、先方が協力的でありがたいとは思う。


「実技のほう、それなりに即効性のある魔法の練習方法知ってるんだけど教えてあげようか?」

「え、詐欺?」


 詐欺師の常套文句に似たようなのがあるのである。

 なぜ知っているかといえば一度引っ掛かりかけたからだ。学院の教師に相談していなければ誘拐されていたかもしれない。もっともメルエールとしては自分を誘拐してどうするんだとも思うけれど。


 あと、魔法じゃなくて魔術でしょ、と訂正する。


「メルちゃん様なんか騙してどうするのさ」

「いや、あんた……」


 自分でも思ったが人に言われると腹が立つ。というか、なんかとはなんだ、おいこら。

 あんた魔術使えないし才能もないのになんでそんなこと知ってて、さらには教えようとしてくるのか。と言いそうになる。


 言わないで止めたのは疲れで頭に血が上り切らなかったのが半分。

 もう半分はこのちっちゃいエルフのこれまでの行動について考えたから。


 言動はアレだが、不思議なほど協力的で、効果的。

 本人は使い魔の従属の効果は出ていないといっているが。

 今日一日で何度助けられたか。

 召喚してから数えたらどうだろう?

 そもそも、使い魔のふりをさせている時点で自分の首根っこはつかまれているも同然である。

 しかし、そのことを利用してどうこうという様子はない。

 まだ、というだけかもしれないが……。


 見た目以上の妙な知恵があるのは間違いない。

 それらはここまでメルエールのためになっているように思われる。


「なんかとはなによ」


 うさみの頭に手をおいて。

 ぐるんぐるん揺さぶった。


「うにゅあーやめれー」


 ぐるんぐるん。


 うーん。よし。

 メルエールは決断する。


「それじゃあ教えてもらえるかしら。どうすればいいの?」


「一日の『死んだ方がマシなやつ』と一週間くらいの『もしかすると死ぬかもしれないやつ』と一年みっちりやる『じっくりコトコトがんばるやつ』があるんだけどどれがいい?」

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