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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
156/494

冒険者初心者とうさみ 18

 二度目の魔法の講義においてアップルは地属性の魔法を覚えた。


 魔法の習得方法としてはできるまで頑張るというものもあるが、一から勉強してたら大体二、三十年かかると言われている。

 これを短時間で済ませることができる画期的な方法があった。

 その方法を扱えるものを魔導師と呼ぶらしい。


 その方法というのは、実際に使えるものが、習得を望む者の体を通して魔法を使うというものだ。

 他者の体を通すので当然難易度も高い。

 しかし、成功すれば習得を望むものは実際に魔法を使うのと同等の経験を得ることができる。

 一度できたことを再現することは、自力で試行錯誤するよりもはるかに簡単だ。

 そして自力で再現できてしまえば、あとは練習すれば身につく。

 神官に言わせれば、神の加護であるという、人間の学習能力だ。



 アップルが覚えたのは土を変形させる魔法である。

 地属性の基本的な魔法であり、この魔法で練習することで地属性というものについての理解を深め、他の地属性魔法の習得や操作を容易にできる。らしい。

 応用も利くので魔法の使い方を学ぶにもよい。らしい。


 アップルはさっそく土を変形させてトゲ付き鈍器を作ろうとした。

 すぐに魔力が尽き、形どることもできなかった。


 講師である氷の魔導師に苦情を言うと。


「そりゃ初心者が簡単に何でもできるわけないでしょうが。練習頑張んなさい」


 窘められて励まされた。


「何も考えずに訓練してもそのうちできるようになるわ。でも、どうすればより効率よくできるか、考えながらいろいろ試したほうが成長は早い。武器を作ろうっていうなら武器の構造とか必要な強度とかも知っておいた方がいいでしょう」


 そう言って、長い棒の先に玉を付けた鈍器を氷で生み出す。

 それを思い切り振ると、半ばで折れた。


「このように形だけ作っても簡単に壊れることもあるから」


 単純に土を変形させるだけでは強度が足りないだろうと。

 アップルはそれは確かにそうだが、覚えてから言うのはずるくないかと思った。


 しかし、土をめっちゃ固めれば石のようになるし、焼けば陶器のようになる。石や陶器も硬さや重さなどの性質は様々に違う。

 また、一度で壊れても即座に作り直せるだけの速さがあるなら武器は使い捨てでも構わない。


「いろいろなことを試せるようにまず基礎をしっかり練習しなさい」


 と言った後で、まあそういう便利そうな効果は大体専用の魔法がすでにあるからお金さえあればすぐに覚えられるけれど、とオチを付けてくれた。


 お金があったら苦労しない。



 他にも使い方の例を教わって二度目の講義は終わった。

 アップルを含め、参加者は全員魔法を覚えた。

 なんだかんだ、自身が魔法を使ったということに興奮して、その日はみんなで祝杯を上げた。







「というわけで、魔法を教えるのはあたしにはできないわ。魔法の訓練法は教えられるけど」

「むむむなのです」


 得意属性の判定、魔法の手ほどき。

 どちらも魔導師、つまり高等教育を受けた魔法使いでなければ扱えない技術。というかそういう魔法だ。教わるか自力で編み出さなければ使えない。

 であるので、基本中の基本の魔法を一つ覚えただけのアップルではナノに魔法を習得させることはできないのだ。


 もっとも逆もまた然りで、神聖魔法は神官でなければ扱えないため、ナノもアップルに神聖魔法を教えることはできない。


「まあ、それはそれとして、訓練方法を共有するなのです」


 しかし、魔力の扱いの訓練方法は双方に価値がある。

 二人はそれぞれが教わった訓練方法を教え合った。



「魔力がなくなったら土の魔法を使う練習ができない……!」

「やっぱこれ難しいよねなのです」


 苦戦は続きそうだが、新しい遊びを覚えたようなもので二人は熱中するのだった。

 問題は収入が増えたわけではないということだが。

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