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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
152/494

冒険者初心者とうさみ 14

「ナノの方はどうだったの?」

「あー……神殿の神官様の目つきが怖かったなのです」


 合祀神殿は中小の街にある神殿で、多くの神様へも、ここで祈ることができる。

 要するに単独では神殿を維持できないので教団側が協力して建てている神殿だ。

 力のある教団や領主など富裕層の支持をうけた教団は独立して神殿を立てる。

 しかし、ドイ・ナカノ街には合祀神殿しか神殿はなかった。


 つまり金銭神様の神官になる手続きも合祀神殿で行うことになる。


 結果を先に述べれば、ナノは今日、無事に神官となった。

 しかし、うさみ神官様に連れられて神殿へと行ったことで、いろいろと知りたくない現実も見えたらしい。


「どうも金銭神様の神官はあまり歓迎されないようなのです」


 まず、訪れた時点で、他神様の神官に、目をそらされたり舌打ちされたりにらめれたりしたそうだ。


「神官様の間でもそういうのあるのね」


 素行が悪くてハブられてる村の厄介者に対する扱いのようだとアップルは思った。

 逆に考えれば、金銭神様の神官が厄介者ということになるが、さて。

 いや。

 金銭神様の神官ではなく、うさみ神官様が厄介者扱いされている可能性もあるのではないだろうか。


 気づいてはいけないことに気づいてしまった……?

 こっそり隣の卓に目を向けると、金髪の小エルフはいつも通り足をプラプラさせていた。


「なんでこういう扱いなのか訊いたなのです」


 そんなアップルをよそに、ナノが話を続ける。


 つまり、お金で神官位を買えることが気に入らないのだそうだ。

 他の神様の神官は、特定の神様に人生を捧げる覚悟と信仰心が必要なのだという。

 しかし、金銭神様はお金を出せば即神官。

 しかもお金を持っている。

 ずるい。


 「まともな神官はまじめだから、ズルしてるように見えるんだろうね」とうさみ神官様の言葉である。

 金銭神側視点のみの意見ではあるが、まあわからないでもない理屈である。


「それから、なぜ完全に排除されないのかも訊いたなのです」


 その答えは単純だった。

 合祀神殿の運営費の多くを負担しているからだそうだ。


 合祀神殿には各神様に仕える司祭が詰めているらしい。

 司祭というのは神官の中での位で、儀式を取り仕切ることができる人だ。つまり平神官より偉い。

 金銭神様の神官では、司祭から聖印が金貨になるという。

 これは、毎日神様から金貨をもらえるということでもある。

 毎日金貨一枚以上というのは、下手な貴族よりも収入が多いことになる。

 この収入を合祀神殿の運営費に充てることで、信者が少なかったり儀式に予算がかかるところも合祀神殿に参入できるのだ。


 ついでに言えば、各地の合祀神殿にはすべて金銭神様の司祭がおり、また金銭神様は単独の神殿を本山以外に持っていない。


「稼ぎ頭にはなかなか頭が上がらないってことかあ」


 ちょっと気に入らないけど、貢献してるから強く言えない。

 アップルは神殿ってもっと厳かな場所だと思っていたけれどわりと所帯じみてるというか俗っぽいのだなと思った。


「まあその、お師匠様の語り口が、その……身近な? そう、私たちにもわかるような説明をしてくださって……」

「無理に言い繕わなくてもいいよー」

「なーのでーす」


 ナノがもごもごしていたところに、隣からの声。

 見ると、金髪小エルフ神官様が手をひらひらと振っていたので二人で振り返す。


「お師匠様?」


 改めて向き直ってから、アップルが尋ねる。


「ええ、うさみさ……んが私の教育担当になったなのです」


 合祀神殿の金銭神様の司祭は、うさみ神官様を見て嫌そうな顔をしたそうだ。すぐに取り繕ったが。

 そして、入信手続きを進める中で身元を尋ねられ、孤児院出身の冒険者だと説明したところ、また顔をしかめたという。すぐに取り繕ったが。

 そして「それなら冒険者ギルド付きのうさみ殿に面倒を見てもらうということで」という話になり、うさみ神官様も了承した――。


「――ということなのです」


 ちなみに、最初に嫌な顔をしたのは、自分がこの地域の責任者であるのに同格以上の神官がいるのがやりにくいから、二度目は別にまとまった収入を持っていない神官は生活できなくなって行方不明や資格喪失する者が多いから。

 というのもうさみ神官様の弁であり、事実は不明だが「あの子もちょっと考えてることが顔に出る癖があるけどいい子なんだよ」と。何目線だろう。近所のおばあちゃんだろうか。






 ともあれ、ナノとうさみさん(ナノも神官になったため、神官様とつけることに違和感を覚え始めた)が師弟となった。

 アップルは思う。


 ずるい。


 こっちは三回、あと二回しか魔法の講義を受けられないというのに。

 師弟ということは付きっきりということではないか。


「でも、お金がないから魔法を使えないなのです」

「む」

「あと、得意属性の判定も受けられていないなのです」

「あー」


 お互い様だったらしい。

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