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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
151/494

冒険者初心者とうさみ 13

 冒険者はパーティを組む。

 この場合のパーティとは一緒に行動する集団のことだ。

 人数はおおむね六人程度まで。これを超えると人数が増えることによるデメリットがパーティを組むメリットを上回ると言われている。


 街の外での活動が主な仕事となる冒険者にとって、力は正義である。

 力を簡単に増やすには頭数を増やすことだ。

 しかし、頭数が多すぎると一人一人の取り分が減る。

 大まかにはこんなところで、他のメリットデメリットの多くはこの派生だ。

 仕事に当たるだけの実力と、その実力を維持する経済性。

 このバランスでパーティは成り立っている


 さて、ドイ・ナカノ街の冒険者ギルドでは正規冒険者になるために試験があり、その中のいくつかの項目はパーティ全体で満たしていれば、合格できる。

 登録証にパーティ限定とつくが。


 この制度を利用するため、アップルとナノはパーティを組むことを決めていた。

 少なくとも、まともな人間なら野営の際に交代で休むため二人以上のパーティを組む必要があるのだ。

 二人はアップルが見習いになったときからの付き合いだが、冒険者になった目的も似ていたし、女性同士ということもある。何より馬が合った。


 そういうわけで、分担可能な分野については別々に学び、手すきの時間に教え合うということもしていた。

 パーティを組む以上一方ができればいいとはいえ、一緒に行動するのに全く知らないのもよろしくない。

 また向き不向きで入れ替えを考えたり、習った時と教えるときの二度、つまり倍の効率で覚えられるのではという計算の結果でもある。


 魔法を学ぶことと、神官になることを分担する発想も、二人のこうした努力から出てきたものであった。







 □■ □■ □■







「それで、魔法の講義はどうだったなのです?」

「あたしには地属性が向いてるらしいわ」



 うさみ神官様の助言に従い、褒章の金貨をもらった者を集め、受付のマっちゃんに相談したところ、街に滞在している氷の魔導師である冒険者に話を付けてもらうことができた。

 集まった人数は五名、金貨は五枚。

 なんでも金貨一枚で基礎中の基礎の魔法を一つ伝授するのが相場だったところを、加えて全体に魔法の基礎と訓練法を教えるという講義を取り付けてくれたらしい。


 マっちゃんが言うには冒険者に魔法使いがあまり多くないのは魔法を使えるようになるかどうかは個人差がある割にその費用が多くかかるからということらしく。

 今回の講義参加者が成功したらギルドの講義に魔法取得のための講義を増やせるかもしれないので頑張ってと激励された。

 いや激励にしては力がこもっていたので圧力と言った方がいいかもしれないが。



 そして講師である魔導師からの提案で、講義は三度、一週間に一度で計三週間ということになり、その第一回目にアップルは参加してきたのである。


「地属性。なんか地味なのです?」

「そ、そんなこと……あるかもしれないけどぉ」



 講義はまず得意属性の判定から始まった。

 なんでも、人にはそれぞれ得意な属性というものがあり、その属性を鍛えたほうが上達が早いのだという。

 魔導師を目指すならまんべんなく覚える必要はあるが、それでもはじめは得意なところから覚えていくのがよい。

 そうやって得意なのを伸ばしてたら他の属性を一から勉強しなおすよりそのまま得意なのを伸ばし続けるほうが効率が良いように思えてくるらしいが。



 そして、得意属性の判定のための魔法というものを利用して参加者の得意属性を調べたところ、アップルは地属性が得意属性であるということが判明したのだ。


 漏れ聞くところによると、アップルは魔法というのはドカーンバリバリーって感じのものだと思っていた。あるいはズトーンゴゴゴゴ。

 そこで今回地属性と言われて首をひねった。

 何ができるのだろうと。


「でも地属性魔法に熟達した魔法使いは一生喰いっぱぐれないらしいわ」

「それはいいねなのです」


 初心者のうちは使い方次第で役に立つが地味だしもっと手っ取り早く使いやすいものがある属性には劣るように見られがちだが、実際のところ初心者だとどの属性も似たようなものだ、と講師に教えられた。

 自分の得意な氷属性とも通じるところがあって便利だとも。


 その上で、得意属性とやりたいことが違うなら、やりたいことを優先した方がいい、ただしはじめは得意属性の方が覚えやすく、今回は機会が限られているからよく考えるようにということだった。


 それから魔法使い共通の基礎訓練をのやり方を教わり、次回一つずつ基礎の魔法を教えてもらえるので属性を決めておくようにと言われて一度目の講義は終わったのだ。



「それで属性を迷っているなのです?」

「そうなのよ。火、水、地、風、氷、光、闇から一つ教えてもらえるんだって」


 他にパーティを組む者がいるのなら、属性を分担することを考えるのだが、現状では候補の域を出ない。


 三度のうちに覚えられなければどうしようもないため、お勧めは得意属性である。

 それはそれとして、火と水は冒険者をやるうえで利便性が高いとか。

 とはいえやはり使いようだし、一生一つの属性しか使えないわけではないのだから最初の一歩に過ぎない。

 そう教わったが、やはり金貨をかけた以上後悔がないようにしたい。


 アップルは一週間頭を悩ませることになる。

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