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使い魔?うさみのご主人様 8

 うさみが犬と向かい合い、手を差し出している。


 いつもへらへらしているうさみの顔に、冷や汗が見える。いっぱい。


 ごくり。


 つばを飲み込む音。

 誰の出した音かわからない。

 自分かもしれないし、うさみかもしれない。


 あまりの緊張感に目を離せない。


 膠着。


 わずかな時間だったのか。


 それとも。 


 とても長い時間だったのか。


 わからなくなる。


 そしてついに、状況が動いた。


「ひゃん!」

「ひっ!?」


 犬が吠えた。

 うさみは全身をびくぅっと震わせ上半身をのけぞらせた。


「ひゃんひゃん!」

「うひゃあ!?」


 さらに吠える犬。

 うさみはころんと後ろに転がりその勢いで立ち上がった。

 その間に犬は距離を詰めていたが、うさみと目が合い足を止める。


 そして再びにらみ合う。


 ごくり。





「はいはい。メルエール様、気になるのはわかりますが、こちらに集中いたしませんと」

「あ……申し訳ありません、リリマリィ様」


 リリマリィ西華男爵令嬢が手をたたくと、うさみと小型犬(・・・)の対峙に見入っていたメルエールはあわてて姿勢を正す。


 現在、メルエールとうさみは学生寮のリリマリィ西華男爵令嬢の部屋にお邪魔していた。

 リリマリィ西華男爵令嬢は同級生である。


 今朝、メルエールの周りでキャッキャウフフしていた女学生の一人である。

 犬好きで小型犬型魔獣の使い魔を大変可愛がっている。

 うさみが犬が苦手だと知って残念がっていたが適度に距離をとってくれた。

 そしてお昼のお茶会に誘ってくれた人でもある。


 リリマリィがふわりと笑うと場がほんわかする、そんな雰囲気の持ち主だが、言うべきことは言える押しの強さももっている。

 あとメルエールより背が小さいのにメルエールより胸が大きい。

 うさみを0、メルエールが2とすると5くらいある。

 なおメルエールの同年代の平均は3とする場合である。

 胸が大きい。


 胸が大きい人が心が広いのだろうか。

 今日随分世話になっているものだからそんな益体もないことを考えてしまったメルエールである。

 すぐにそれはそれこれはこれと思い直したけれど。



 さて、そのリリマリィの部屋にお邪魔しているのは他でもない。

 勉強を教えてくださいお願いしますと頭を下げてお土産にうさみを持ってきたのだ。


 メルエールが講義についていけていないことから、うさみが一つの提案をしたのである。


「わからないならお友達に相談して教えてもらったら?」


 なぜ教師ではないのか。


「先生を独占するとまた悪目立ちするしひいきされてるって言われちゃうんじゃない?」


 ああ、ありそう。


「お勉強会するとお友達と仲良くなれるよ」


 それが事実なら魅力的である。

 しかし、とメルエールは考える。この提案には致命的な問題がある。



 メルエールには友達がいない。



「今日お茶会した人たちはもうお友達でしょ」


「えっ」


「えっ」




 こうしてキャッキャウフフ女子のなかから、リリマリィ西華男爵令嬢にお願いすることにしたのだ。


 同じ男爵令嬢ということで比較的話しやすいと思われたし、うさみが犬を苦手としているからだ。

 うさみをいじめようということではなく、それでも仲良くしてくれたという点に注目したのである。

 なんやかんや言ってくれやがるうさみに意趣返しをしようというそんな意図ではないのである。


 うさみはウサギの使い魔を持っている子がいいんじゃないかなと言っていたが、メルエールが自分の考えを話して納得させた。


 そして勇気を出して訪ねたところ、なんと快く了承してくれたのである。

 正直無理を言っている自覚はあったのだが、このままでは退学が見えているのは事実であったし、だめでも自分が恥をかくだけですむのでダメでもともと、と思っていた。

 胸の大きい人は心が広いのだろうかと思ったのはこの時だ。

 同時に手土産を用意しておくべきだったことに気づいてうさみを差し出した。


 ということがあって現在お勉強会開催中なのであった。


「ひゃんひゃん!」

「うぎょあー!?」

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