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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
冒険者編
139/494

冒険者初心者 1

 冒険者ギルドという組織がある。

 冒険者の互助組織が発展したものであり、城壁の外での活動を主とする冒険者の特性上、複数の街や国に対して影響力を及ぼすこともある。


 冒険者はこの冒険者ギルドのおかげで存在を許されているといっても過言ではない。

 武装集団がバラバラに動いていては取り締まりの対象となるが、その暴力をふるう先を制御され、街や国の役に立つとみなされることで存在価値を維持しているのだ。


 さて、その冒険者ギルドにはある社会的な役割を担っている。


 それは貧民の受け皿である。

 冒険者となるためには過去を問われない。

 どんな人物でも、冒険者になるだけであれば可能なのである。

 もちろんその後の活躍、生存率などには大いに影響を与えるが。


 底辺の食い詰めた貧民に仕事と報酬を与えることのできる組織。

 冒険者としてすら食べていけなくなってしまえばスラムへ行くか犯罪者になるしか道はないと言われる。

 犯罪者だのチンピラだのと半ば同一視されることもあるのは、その一歩手前の層を構成員としているからなのだ。


 しかし、そんな底辺からでも、運に恵まれれば大いに名を上げることもある、それも冒険者という職業だ。

 だからこそ、行く当てを失った者は最後の賭けとして冒険者となるのである。






 □■ □■ □■





 アップルは村娘である。


 正確には村娘だった(、、、)


 今年、村が不作で口減らししなければならなくなった。


 アップルの家には弟妹が三人いる。

 弟は大事な跡継ぎで労働力、下の二人はまだ幼く食べる量も少ない。

 そして稼ぎ頭である父と補佐する母。

 自然、減らすべき口はアップルということになる。


 口を減らすとしても方法はいろいろとある。


 一番穏当なのは嫁に出すことだ。

 しかし、適当な相手がいなかった。

 アップルは少しやんちゃなところがあったので、同年代からは敬遠されていた。

 年下からは頼れる姉御として慕われていたが、まだ嫁を貰う年齢ではない。

 そもそも村全体が不作なので口の押し付け合いにしかならない。


 あとは人買いに売るか、街に出稼ぎに出すかである。


 こういった不作の時には人買いが村を訪れる。

 売られれば自由はなくなる。

 待遇は買われていった先次第であるが、そこまで酷いことはないらしい。

 もっとも、人買いの言うことであるからそのまま信用していいのかはわからない。

 ただ、二度と村に戻ることはできないだろう。


 村に戻れないというのは出稼ぎに出た場合もそうなる可能性がある。いや高い。


 出稼ぎに出る、と言うは易いが、田舎の村の一農民だ。ろくなコネはない。

 たまに来る行商人に頼むくらいしかできない。

 そして不作の村がアップルの村だけであるという保証はない。

 口減らし目的で村を出されるものは、どこにでもいる。

 そして街の仕事の口も、当然限りがあるのだ。

 行商人はしょせん行商人。

 街でのコネはさして強くない。


 不確かなコネと限りある仕事。

 コネが当てにできなかった場合、田舎娘が街で仕事を見つけられるものだろうか。

 仕事につけずスラムの住人隣のたれ死ぬ、そんな未来の可能性は十分にあるのだ。



 ある日アップルは両親に呼び出され、口減らしの決定を告げられた。

 そしてどうするか選ぶようにと。


 最後の親心かもしれない。

 どちらを選んでも二度と会えない可能性が高いのだ。


 結果としてアップルは出稼ぎの道を選んだ。

 仮に悲惨な結末となるとしても、自分で生き方を決めたいと思ったのだ。

 アップルなりに勝算はあった。

 村に訪れる数少ない人達から聞いた街の話。

 憧れはあった。

 だが、村で生きる限りは関わりのないことと思っていた。


 しかし、こうして、村を出ることになった。

 こうなったからには、心のままに道を選んでも文句をいうものはいない。


 こうしてアップルは街に出て。


 冒険者ギルドの戸を叩いたのである。

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