目からビーム初心者とうさみ 41
「そういえばそろそろ決まった?」
朝食の席で、うさちゃんが言った。
なんのことだろうか。
今日の夕飯のこと、ではないと思う。昨日の夕飯時に話し終わっているからだ。
チーズハンバーグという料理で合意済みである。
今日の手伝いについても指示を受けている。
ウサギを連れて百八十から二百までの区画で収穫の予定である。
一番いいところをうちで使って、次に販売用、残りはウサギが食べる分だ。未熟なところはウサギが判断して残るので気にしなくてもいい。
お城見学の予定も決まっている。
次はいよいよ中枢部を見せてもらえるらしい。
最低限身を護れる程度の魔法を扱えないと危険なので保留が続いていたのだが、ついにうさちゃん同伴という条件で許可が下りたのだ。
地道に魔力操作の練習をした甲斐があった。目のせいであまりうまく扱えないのかもということで時間がかかってしまった。
それ以外に何かあっただろうか。
「今日でちょうど二年目だから」
二年目。
私は眉間に手をやって思い出そうとした。
二年前といえば……そうだ、私が天空の城に住むようになったころである。
二年たってもうさちゃんの見た目は変わらない。
一度尋ねてみたところ、「私はこれでもう完成しちゃってるんだ……」と遠い目をしていた。
どこか寂しそうに見えたので抱きしめてみたら、抜け出して胸をたたかれた。
あれはいったいどういう意図なのか今でもわからない。
とりあえず成長期が終わっているということはわかったのでそれ以来触れないようにしている。
思考がそれた。
二年間、家事の手伝いと、農業の手伝いと、天空の城の見学と、世界各地の観光と、魔法の練習と、ウサギと戯れることと、うさちゃん所有の書物を読むことなどなど、のんびりと充実した生活を送っていた。
手伝いと言っても、私ができることはいてもいなくても変わらない程度のことだ。
見学や観光はうさちゃんに同伴してのことで他のこともうさちゃんありきである。
ウサギと戯れるのも、うさちゃんが飼いならしたウサギあってのことだ。そうでなければウサギの高位種族と触れ合うなんてことは不可能である。視界に入る前に逃げられるか命を狩り取られる。と書物にあった。
それから一日一度上空へ目からビームを放っている。
これで目からビーム能力を鍛えつつ爆発するのを抑止するのだ。鍛えすぎても爆発までの猶予が短くなるということなので適度にである。
ああそうだ。
目からビームで思い出した。
今後の身の振り方を考えるということだった。決めたらうさちゃんがちょっと手伝ってくれると、そう言っていたではないか。
すっかり忘れていた。
もう一度言うが今私は大変充実しているのだ。
うさちゃんとの暮らしは楽しい。
あまり役に立ててはいないけれど。
二年一緒に暮らして分かったが、うさちゃんは結構寂しがり屋だ。
こんな秘境に住んでいて、頻繁に街へと出かける。大した用もないのに。
食事はうさちゃんの作るものの方がおいしいし、食料は自分で育てているし、日用品も自分で作る。
極論、天空の城の中だけで一生暮らせるのだ。
それでもあれこれと理由を付けて街に行く。
私はこれを寂しいからだと判断していた。
というわけで。
「ここで一生暮らしたいです」
うさちゃんとの関係はうまくいっていると思う。
うさちゃんは普段だいたい笑顔なのだが、その中でもうれしいときや楽しいときの顔が少し違う。
その見分けがつくようになったのも、寂しがり屋だと判断することになった一因なのだがさておき。
良好な関係を築いているということはまさか断られることはあるまい。
その上寂しがり屋と来ればなおのことである。
「ダメ」
あれ?