目からビーム初心者とうさみ 40
長い。
説明が。
「つまり、わたしは年を取ると目からビームを出し続けるおばあちゃんになって爆発して死ぬると」
なんかすごいということはわかったが、魔法でも神聖魔法でも私の手に負えないことは変わりはない。
問題にするべきは実際的なことである。
お年寄りの腰が曲がったり目が見えにくくなるのと同じように、目からビームが漏れるようになるということ。
お漏らしということか。
……いやお漏らしと呼ぶのはやめよう。うん。
「違う違う。爆発して死ぬか、ビーム垂れ流しになるかのどっちかになるというのがわたしの予想。それでビーム垂れ流しになったら眩しいのが止まらなくなって頭がおかしくなるんじゃないかなって」
爆発かお漏らしか。
いやお漏らしはやめたのだった。
爆発か垂れ流しか。
なんだかもっとダメな感じがす――置いといて。
「ところでうさちゃんに当たりそうになったというのは?」
「え? ええと、多分目覚めて最初の目からビームだと思うんだけどわたし軌道上にいたんだよ。あとオワリエンドの街でも」
「そうだったのですか。偶然ですね」
うさちゃんを消滅させるところだったというのか。
生きのこってくれてよかった。そうでなければこうして私のことを知ることもできなかっただろう。
「生きていてくれてありがとうございます」
「え、あ、うん。どういたしまして」
では特定の脅威というのは?
尋ねてみると。
「世界を滅ぼしうる存在っていう大雑把な――あ」
言葉の途中で突然うさちゃんが後ろを向いた。
が、すぐにこちらへ向き直って続ける。
「大雑把なくくりになってたよ」
「すみません、それより今のは?」
とても気になる。
「ああ、今の話にあんまり関係なかったから。ちょっと魔王が生まれただけで」
「そうですか、確かに関係ないですね。……魔王?」
魔王は私が目からビームしたのではなかったか。
私が首をかしげていると。
「オワリエンドのは魔王になる直前に消えたから。街も滅んでなかったでしょ? 代わりに別の魔王が生まれたの」
「ええ……」
前に私が危機を食い止めたいい話風に話してくれたのはなんだったのか。
代わりで魔王が生まれるものとは知らなかった。
まあそれは置いておいて。
「私はどうしたらいいでしょうか」
悩ましい。
もともと、村が滅んだので街に出てきたのである。
そしてうさちゃんに連れてこられたわけだ。
そして、目からビームの真実を知ったところ。
街で細々と暮らそうという予定だったわけだ。
薬草採りで生計を立てることができればと考えていた。
その方針は今でも変える必要はないと思う。
私にできることはそう多くはないのだ。目からビームを除けば。
目からビームもうまく使えば役に立つこともあるだろう。
欠点がはっきりしていて認識できていればやりようはあるのではないか。
まてよ?
改めて考えてみると。
いつ目からビームが垂れ流しになるか、あるいは爆発するかという状態で、それはどうだろうか。
迷惑この上ないのではないだろうか。
考えるまで気が付かなかった。これも精神制御とやらのせいか。
目からビームに関することに――。
まあうまいことやれば問題ないだろう。
本当に問題ないか?
んんん?
私は考え込んだ。腕を組んで首をひねった。
「まあ、急がないでもしばらく考えたらいいよ。決まったら、いくらか手伝うからさ」
うさちゃんがそう言ってくれたので、甘えることにした。
そして、二年が経過した。