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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
目からビーム編
133/494

目からビーム初心者とうさみ 38

「おお。おおおおお!」


 翌日。

 私は天空の城外縁部にある尖塔の最上階にいた。


 昨晩は風呂と食事の後、持って帰った資料の解呪をするから先に寝ているようにとのうさちゃんのお言葉に甘えて早々に休んだ。


 そして朝になり、うさちゃんが尖塔に連れて来てくれたというわけだ。

 これは、昨日私が建築物が見たいと森へ這入ってうさちゃんに助けられたことを忖度してくれた、というだけではない。


「後でゆっくり見ていいから、先に目からビームの検証しちゃおうよー」


 ということである。


 昨日、目からビームでないという事態があったので、条件を調べてみようという話になったのである。

 うさちゃん小屋は天空の城上面の真ん中あたりにあるため、誤射で畑などを貫かないようにこうして天空の城の端っこまでやってきたのだ。


 尖塔から見える景色は、特殊と言っていいだろう。

 空の上、黒い雲が遠巻きに囲んでいるが、上空には雲はない。

 前に雨雲、空に太陽。

 地上ではまずみられるものではあるまい。

 これだけ見ても絶景だ。


「雲に向けて目からビームすればよろしいですか?」

「そだね。まず斜め下に向けて撃ってみて」


 尖塔の石の壁に体を預ける。

 身を乗り出してみると、下方も雲で覆われていることがわかる。

 時々稲光が走る。

 雷雲に守られた天空の城。

 はう。


「落ちないでよ?」

「あ、すみません」


 前掛けの腰ひもを引っ張られた。

 見とれている場合ではない。先にやることを済ませればゆっくり見ることができるのだから早くやってしまおう。


 眩しいのは結構な負担だけれど。


「目からビーム……出ませんね」


 斜め下を向いて、目からビームは出なかった。

 前回もそうだった。これはあの時だけの特殊条件ではなかったということだろうか。

「とりあえず、ちょっとずつ視線を上げながらやってみて。境界を確認するから」

「はい」


 言われた通り視線を上げながら目からビーム。


 出ない。


 出ない。


 出ない。


 出た眩しっ!


「あ、出したまま視線を下げてみて」


 眩しいのだけれども。

 やってみる。


「……下げられません」

「おっけ、ちょっと力抜いてね」


 誰かの小さな手が、いや、うさちゃんしかいないのだからうさちゃんなのだろうが、私の後頭部へ触れる。

 そして押し込まれた。


「痛い痛い痛いです!?」


 私が悲鳴を上げると、うさちゃんはすぐに手を離した。


「すごい力で反発してくるんだけど力抜けないの?」

「無理ですねえ」


 ビームを止めてうさちゃんに向き直る。

 眩しいわ痛いわでなかなかにつらい。


「じゃあ次はこの棒の一端を地面に、一端を額につけて棒を中心に十回くるくる回ったあとこの目隠しをして、合図したらビームしてね」

「手が込んでますね」


 くるくる回ることに意味があるのだろうか。

 と思いながら回っていると、だんだん前後左右がわからなくなってくる。

 今何回だろう。

 気のせいか地面すら揺れているような気がしてくる。


 そして目隠しを付けられて向きまでうさちゃんの手で調整されて。


「じゃあまず正面からね。はい撃って」

「目からビーム……あれ、出ません?」


 正面のはずなのに、でない。

 どういうことだろう。


「じゃあちょっとずつ顔を上げてみよう」

「は、はい」


 予想外のことに動揺するが、とりあえず言われた通りに。


 出ない。


 出た眩しっ!


「おっけ、ちょっと出してて」


 うさちゃんが横で何かしている気配がする。

 やはりこれ、目からビーム中に視覚を使えないのは不具合だと思う。



 その後、一応、と言いながら上方向への目からビームを確認して検証は終わった。


「よっし、もういいよ、お疲れ様」

「はい。ああ、目が……」


 見えないせいで何をやっていたのかさっぱりだが。

 目からビームが出せる角度を確かめていたのはさすがに理解したけれど。

 まあ、このあと話を聞かせてもらえるだろう。


 ところで。


「ところで、なんだか傾いてませんか?」


 床が。


「うん、すぐ直すね」


 特に音もなく、傾きが直った。

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