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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
目からビーム編
130/494

目からビーム初心者とうさみ 35

「あうあうあー」


 私は目を回していた。


 ニンジンを手に囮となったこと自体は、まだいい。

 何度も死ぬかと思ったが、うさちゃんなら何とかするだろうという確信があった。

 そもそも空を駆けることができるのだから、いつでも離脱できるのだ。

 だから大丈夫。死ぬかと思ったけれど。


 では何が悪かったのかというと、速度である。


 あるものが移動するとき同じ速度でも、近くのものは早く、遠くのものはゆっくり動くように見える。

 逆に自身が移動するときも、やはり近くの景色は早く、遠くの景色はゆっくりと変化していく。


 さて、上空を移動するときに、すごーいはやーいと感じていた速度を地上で出すとどう感じるだろうか。


 私の答えは、何が何だか分からなくなって目が回る、だった。



 ウサギを引き付けるため、加減して引き離しすぎないよう、はぐれそうなウサギがいたら速度を緩めたり、突然向きを変えて直線距離を調整したり、足を止めてしばらくその場を動かずにしのいだりしたので、最大速度は空を行くのと比べるとずいぶん低かったことだろう。

 あと追いつかれそうだったりギリギリでかわしたりして怖かった。


 だがそれ以上に、目の前の景色が、地面が、すさまじい速度で流れていく。

 その状況こそが最も怖かったのだ。

 しかもいきなり止まったり向きが変わったりする。

 それらの判断はすべて私ではなくうさちゃんだ。

 次の瞬間自分がどうなっているのか予想できない。できても外される。

 もう目を回すしかない。


 結果としてウサギの集団を引き付けることには成功し、ベリーたち氷の剣とお貴族様は無事に逃げることができたと思う。

 逃げた先で別の何かに襲われていないといいけれど。


 そうして私たちは村跡まで戻ってきていた。

 もう手にニンジンは持っていない。


「メカちゃんがニンジン手放したら離脱しようと思ってたんだけど、なかなか手放さないから」

「ええ……」


 そんな。

 それならばすぐに手放せばよかった。

 いや、それだとベリーたちが逃げ切れなかったかもしれない。

 こう、適当なところで手放せばよかった。


「それじゃそろそろ本題を進めよ。あっちにある屋敷跡でいいんだよね?」


 私がへなへなと崩れ落ちていると、うさちゃんが半壊した、他の家とは明確に規模が違う建物を指して問うてくる。


「はい。あれが私のいたところです」


 始まりの場所。

 私は帰ってきた。


 村のはずれ、木々に寄り添うように建っている。

 建物より向う側は木も無事だ。

 改めて見ると屋敷の壊れ方と周囲の被害の様子は連動していた。

 私が背を向けていた側は無傷。


 なるほど、私が目からビームした結果半壊したというのは確からしい。


 ということは、この村の人は私が目からビームしたということだろう。


 ……やはり何の感慨もわかない。

 精神制御とかなんとかうさちゃんは言っていたが。

 それは、ここに来て調べればわかるものなのだろうか。



「ここが中心地かな」


 屋敷跡。

 最初に私が寝ていた台は残っており、うさちゃんがそこまで迷わずに辿り着いた。

 私も寝台まで行き、腰かける。

 そして改めてあたりを見回した。


 見通しが大変良い。


 うん。


「手掛かりになりそうなものはありますか?」

「んー、まあちょっと調べてみるよ。あっちに書棚っぽいものとか机だったっぽいのとかあるし。あとその寝台も」

「え?」


 うさちゃんがそう言って示すのを見て、私は自分が座っている寝台を見た。


「魔法的に手が加わってる」

「ええっ!?」


 私は飛びのいた。

 魔法となれば何が起きるかわからない。


「ちょっと時間かかるかもだから……んー、建物の残ってるところに書斎とかないか見てきてくれる? あとついでに何か売れそうなものとか使えそうなもの、集めて持っていこう。売れるとこまで運んであげる」

「わかりました」


 うさちゃんの指示に従うことにした。

 魔法については私は素人であるし、調べる手伝いをするにも全く見当がつかない。

 邪魔にならないようにするのが精々だろう。

 ならばうさちゃんの厚意に乗っておこうというわけだ。

 お金は結構持っているが、増えて困るものでもない。重いくらいだ。

 着替えもまだ何着もあったし回収してくるとしよう。


 こうして私は元屋敷の二度目の探索をはじめたのだ。

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