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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
目からビーム編
124/494

目からビーム初心者とうさみ 29

「なにしてるの?」

「う、うさちゃんが二人!?」


 森で猿の群れに絡まれているところを、うさちゃん(エルフ)に助けられた。







 □■ □■ □■







「なんでウサギさんと間違えるのか。エルフだって言ったよね」

「魔法かなと」


 うさちゃん小屋に帰ってきて、食事をとりながら経緯を話すと呆れられてしまった。

 うさちゃん(エルフ)はなぜか、うさちゃん(ウサギ)を頭に載せて、ぽりぽりと細切りにした野菜をかじる。ニンジンだ。やはりウサギなのでは?

 うさちゃん(ウサギ)にも同じものを持った手を伸ばし、与えている。

 二人して野菜をかじってだんだん短くなっていくのを見ると、私も食べさせてみたくなる。

 だがそんな暇はなかった。


 昨晩の残りの見たことの無い食べ物が食べてくれと私を待っているのだ。

 お腹いっぱいの時ですらおいしそうに見えた料理である。

 たっぷり睡眠をとって朝の散歩を終えた今、お腹が早く早くと催促してくる。

 この茶色いの「唐揚げね」こっちの茶色いの「ハンバーグ」あっちの赤いの「ナポリタン」そっちの赤いのは「チキンライス」何で旗「お約束だから」やっぱりこの茶色いのは「カレーだよ」。

 全体的に茶色が多めであるが、添えられた野菜の華やかなこと、地味な印象はまるでなく、それぞれが芸術品かと思えるような、あいやカレーはちょっと見てくれは……。

 ともあれうさちゃん(エルフ)が腕を振るってくれたであろう料理。昨晩手を付けられなかった分、ぜひとも楽しまなければなるまい。

 うさちゃんたちに野菜を与えるのはその後でもいいだろう。



 こうして私は存分に舌鼓をうち、食べ終わるころには、当然ながらうさちゃんもおなか一杯になっていた。

 後回しにしたせいだ。私って本当に馬鹿……でもおいしかった。こんなにおいしく多彩な食卓を経験したのは初めてだ。記憶は三日分しかないけれど。



「まあその、私は姿を変えて自分を騙ることはしないから。髪型や服装くらいは変えるけどさ、別の姿だったら別人だと思っていいよ」

「別の姿で活動してるみたいな言い方ですね」


 今日のうさちゃん(エルフ)は長い髪を二か所に丸くまとめて布をかぶせている。白い布を赤いひもで袋のように使っている。昨日のリボンを比べるとウサギらしさはなくなったが、また別の動物のようにも見える。


「やろうと思えばできるだけだよ」

「そうですか。ところで髪形可愛いですね」

「え、そう? えへへ」


 できるのか。魔法はなんでもありなのだな。私は改めてそう思った。

 ちょっと褒めただけでニッコニコになる子どもなのに、実にすごい魔法使いだ。








「さて、それじゃあそろそろ出かけようか」


 食事のあと、勝手に流しに飛んで行き洗われる食器を横目にたわいもない雑談――料理の感想や作り方、食材の育て方など――に興じていたのだが、話題が一段落したところでうさちゃん(エルフ)がそう切り出した。いつの間にか洗い物の音も止んでいた。

 天空の城の見学もしたいところだが、先の予定を優先すべきだろう。そもそも当事者は私である。名残惜しいがうさちゃん(エルフ)の厚意に甘えていられる間にできるだけのことをしておきたい。

 荷物を用意する。

 といってももともと多くはない。

 背中に赤い鞄を。

 肩に緑の鞄を。

 胸に金色のうさちゃん(ウサギ)を。


「準備できました」

「待って」


 気づかれたか。

 天空の城見学と違い、うさちゃん(ウサギ)に食事を与えることは場所を選ばない。

 であれば、連れて行くだけでお昼あたりに達成可能。

 そう考えてのことだったが、うさちゃん(エルフ)も目聡かった。

 さすがのすごい魔法使いである。


「だめですか」

「地上につれていったら、うっかりすると国の三つ四つ滅びかねないから、おすすめはしないかな」


 私は悩んだ。

 悩んだ末にそっとうさちゃん(ウサギ)地面に降ろした。

 国が滅びるというのはまた大げさな話に思えるが、いっているのがうさちゃん(エルフ)である。

 短い付き合いだが、この子どもエルフの言うことを否定するのはすでに難しい。

 空を駆け、天空の城に居を構える魔法使い。すでに私の想像の域を超えている。

 冗談を言うときは表情の変化でわかりやすいのだが、今はその様子もない。


 では実際に連れて行ったら滅ぶのか。

 いや、「うっかり」「滅びかねない」と言った。

 絶対に滅ぶわけではないのだろう。

 しかしうっかり滅ぼす。

 どこか親近感を覚える。

 うっかり魔王(候補)を滅ぼした私としては、うっかり仲間を増やすのは心苦しい。

「ごめんね、うさちゃん(ウサギ)」


 うさちゃん(ウサギ)は、ぷ、と鳴いてからまるで手を振るように耳を動かし、跳ね去った。


「私を呼ぶのと同じ呼び方するのはちょっとさあ」

「ごめんね、うさちゃん(エルフ)」


 ジト目でも可愛らしい。

 もしかすると私は子どもが好きなのかもしれない。

 そうでなければ苦言を呈されているのに好意的な感情を抱くことはあるまい。



 まあそういったあれこれは置いておいて。

 改めて、始まりの村へと出発することになった。

 おんぶで。

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